9 小さな誘惑に対処する方法

このような小さな誘惑は(虚栄・猜疑・不平・嫉妬・羨望・恋愛などの小さいことの)ちょうど青バエが、私たちの眼の前にチラついたり、頬や鼻にとまったりするのと同じように、その煩わしさから、なかなか逃れることはできません。ですから、これに対する最善の方法は、全くそれを気にかけないことです。なぜならば、私たちが、天主にお仕えしようという確固たる決心があるならば、これらは、たとえ、私たちに煩わしくても、決して私たちに害を与えることはできないからです。ですから、あなたは、これらの小さい誘惑を無視し、そのささやきに耳を貸さず、体のまわりを唸りながら飛び回る青バエやアブと同じように、黙ってそれを放置するといいでしょう。そして刺しに来たり、あなたの心にとまりに来たならば、そのとき、それを打ち払えばそれでいいのです。それには、特に戦争も、応答も必要でありません。ただ誘惑と反対の行為、特に天主に対する愛徳を実行すれば十分です。あなたの感じた誘惑と反対の徳を、無理に修めて行こうとしてはいけません。それでは、誘惑と争うことになります。それよりも、もし誘惑の正体を見極める余裕があるならば、それと全く反対する徳の一行為を実行し、そのあとで、十字架上のイエス・キリストを心の中で見て、主に対する愛徳の行為をもって、その御足に接吻しに行くといいでしょう。これが、小であれ、大であれ、あらゆる誘惑に際して、敵に打ち勝つ最善の秘訣であります。天主に対する愛徳は、一切の完全な善徳をそのなかに包み持っていて、個々について、個々の徳より一層すぐれているために、あらゆる悪に対抗するために絶好の良薬であります。それだけではなく、あらゆる誘惑に対して、この避難所に急いで駆けつける習慣をつくれば、誘惑の種類に気をつける必要がなくなってきます。なにか心に不穏を感じたならば、すぐにこの最善の道をとればいいでしょう。そして、悪魔は、自分の誘惑が、ことごとく、天主に対する愛徳の動機となることを見れば、ついに、全く誘惑を中止することに至るでしょう。これが、日常の小さい誘惑に関して注意することです。いちいちこれに関わろうとするなら、無駄に苦しむだけで、おそらくは何の効果もあげることはできないでしょう。