22・朝の法廷

明るくなると、アンナ、カイファ、律法学士と長老たちは大法廷に集まった。すなわちその集まりを法的に有効にするため、というのは夜間の裁判が無効なので - 祭日も押し迫り、余裕がないため - それはただ準備的に証人訊問をしたということに過ぎなかった。大部分の議員たちは裁判が終わったあとカイファの家で過ごした。法廷の上には寝台付きの小部屋があったのである。ニコデモとアリマテアのヨゼフを混じえた多くの者は夜が明けてから来た。それは大集会であったが、すべてが非常に速やかに行われた。かれらがイエスの死刑宣告を相談しているとき、ニコデモとアリマテアのヨゼフおよび他の二、三人の者はイエスの敵の前に進み出て、人民の間に暴動が起きるかも知れないから、この問題は祭日後まで延ばすよう要求した。また今まで判明した証人の証言も実際おたがいは矛盾していて、なんら正しい判断の基礎とはなり得ないと申し出た。大祭司や大部分の者はこの抗議にひどく不愉快そうな顔つきをした。かれら悪人たちは、反対者たちにおまえたちもナザレト人のために疑いをかけられているのだということを十分にほのめかした。そして救い主に同情している者たちはみな会議から追い出されてしまった。しかしかれらはここで決議されたすべての事柄に抗議を提出して会議室を出、神殿に向かった。かれらはこの事件以来二度と衆議所には行かなかった。さてカイファは、哀れな救い主を獄舎から引き出し、判決後ただちに手間取らず、ピラトの所に連行出来るように手配を命じた。それで法廷の小者たちは大騒ぎしながら獄舎に急ぎ、軽蔑の声を浴びせながらイエスにおどりかかり、御手をほどき、ボロボロのマントを肩から引きはずした。そしていろいろの汚物のべっとりとついている編んだ下着を着るように、殴りながら命じた。それから、主の体を縄で再び縛り、主を牢獄から引き出した。これらのことはすべて大急ぎで戦慄すべき乱暴のうちになされた。かれらは庭にならんでいる兵卒の列の間を通り、主を法廷の広間に駆り立てて来た。しかし主が全く変わり果て、汚れた下着だけを着て議員の前に現れるとすぐに、かれらは吐き気をもよおし、ますますいら立ってしまった。同情などというものはこの頑固なユダヤ人には少しも起きなかった。カイファは侮辱し、激怒しながら、イエスに言った。「もしおまえが神に塗油せられたメシアであるなら、それをわれわれに告げろ」。すると主は頭を持ち上げ、聖なる落ちつきのうちに荘厳、厳粛に仰せられた。「わたしが言っても、あなたたちは決して信じないだろう。わたしが尋ねても、決して答えないだろう。またわたしを放免しないであろう。しかし今からのち、人の子は全能の神の右に座る」。すると、かれらはたがいに顔を見合わせ、侮辱・嘲笑しながら言った。「それでは貴様は!貴様は!神の子だと言うのだな」。イエスは永遠の真理の声をもって答えた。「その通り、わたしはあなたたちが言う通りの者である」。この言葉と共にかれらはたがいに言った。「これ以上いかなる証人も必要としない。われわれはそれをかれの口から聞いたではないか」。ここで一同誹謗の声と共に立ち上がった。かれらは獄吏に命じて主を改めて縛り直し、死刑の宣告された者にするように、首に鎖をかけた。かれらはすでにピラトに祭日のため急がなければならないから、今朝早く犯罪者を裁く準備をしてくれるようにと使いを出して置いた。かれらはローマの地方総督に対し、不平不満でうずうずしていた。それはかれら自らには死刑判決を下すことが許されておらず、さらに総督の所へも出かけて行かねばならないからである。兵卒らは建物の前の庭に整列した。そしてその列は外の通りまで続いていた。イエスの敵や悪人たちは大勢その間に館の前に集まった。大祭司と一部の議員がまず出かけて行った。次いで獄吏に引かれた哀れな救い主が軍隊に取り囲まれてこれに続いた。最後にならず者たちがみな一つになって付いて来た。このようにして、かれらはピラトの館に向かった。しかし途中で、一団の司祭たちはその日いろいろの行事を行うために神殿に向かった。