五六  墓に葬られたもう

男たちは聖なる体を皮製の担架にのせ、褐色の布をかぶせ、二本の柄を両側に通した。前の方の柄をニコデモとヨゼフが持ち、うしろをヨハネとアベナダルが持った。そのあとに聖婦人が続いた。最後にカシウスと兵卒が従った。たいまつを持った二、三の兵卒が先に行った。暗い墓穴の中では灯が必要であったからである。一同は低い悲しげな調子で詩編を唱えつつ歩を運んだ。わたしは丘の上で大ヤコブがこの行列を見送っているのを見た。かれは間もなく見えなくなった。洞の中の弟子たちに知らせに行ったのだった。一同が墓岩の前に着くと、担架のおおいを取り、聖遺骸を下ろした。まったく新しい墓穴は、ニコデモの下僕が掃除をし香をたきこめてあった。それは岩を実にみごとに彫り込んで出来たものであった。洞の中の遺骸台は頭の方が足の方よりも少し広かった。またそこには包んだ屍の形が彫り込んであった。聖婦人たちは墓の入口に向かって座った。四人の男は主の体を洞の中に運び込んで下におろした。それから彫り込みのある遺骸台の一部に香料を満たした。次ぎに布をその上に広げて聖遺骸を置いた。一番下に敷いていた布は遺骸台の上から垂れていた。かれらは涙のうちに愛をこめて主を抱擁してから洞を出た。そののち聖母は一人で中へはいられた。わたしは聖母が、御子の遺骸の上に泣き伏されているのを見た。聖母が墓を出ると、マグダレナが急いで中へはいった。かの女は庭で枝や花を折り集めていたが、それを遺骸の上にまき散らした。かの女はまたも悲しみつつ、主の足を抱いた。その時、ほかの男たちが急ぐように注意したので、かの女はふたたび婦人たちの所に戻って来た。それから垂れ下がっていた布を聖遺骸の上にかぶせ、その上に茶色の敷物を広げた。次いで扉をしめたがその扉は銅か青銅かで出来ているようであった。墓を封ずるための大きな石は非常に重かった。かれらは棒をテコにしてそれをころがした。すでに安息日が始まっていた。ニコデモとヨゼフは庭から城壁の方にぬける小さな門を通って街の方に行った。かれの下僕たちは残した道具を取りにカルワリオにのぼって行った。兵卒らは城門を警備している一隊に加わった。カシウスは見聞きしたことを全部報告するため、ピラトの所に行った。ピラトはその話を内心恐怖をもって聞いていたが、外面はカシウスを狂信者としてあしらった。聖母は連れといっしょにふたたびカルワリオにのぼり、そこで祈られてからまた小さな門を通って街の方へお帰りになった。そのあとで聖母が連れと共に晩餐の広間の扉をたたいておられた。そこにかの女らのほか、弟子が大分集まった。アベナダルも入ることを許された。聖婦人たちは別れて聖母の部屋に入って行った。かれらは少しばかりのものを食べた。男たちは着物を着かえた。かれらがその部屋の中でランプの下に立って安息日を祝っていた。次いで数個のテーブルに分かれてかれらは食事をした。一同は深い悲しみと迷いに打ち沈んでいた。聖婦人たちも聖母と共に一つのランプの下で祈っていた。おそくなって、もう暗くなってからラザロ、マルタ、ナインの寡婦、サマリアの婦人ディナとスファンのマラが入って来た。その人たちはみなきょう一日をベタニアで過ごしていた。かれらは新たに入って来た人々に主のご苦難の有様を語り聞かせたので、苦痛がまた新たに起こるのだった。その後アリマテアのヨゼフは弟子数人と婦人たちと共に家に帰った。おずおずとかれらが悲しげに街を歩いて行くと、突然カイファの法廷の裏から武装した一隊が走り出て来て、アリマテアのヨゼフを捕らえた。他の者は悲鳴をあげて逃げ散った。わたしはかれらがこの善人ヨゼフを城壁の物見台の中に監禁したのを見た。この捕縛はカイファが命じたので安息日を守る義務のない異教徒の兵卒によってなされた。かれらはヨゼフが居なくなったことについて何事も語らず、黙って餓死させようともくろんだ。