五二  アリマテアのヨゼフ、ピラトを訪れる

辛うじて平穏がいくらか取り戻された時、度を失っているピラトのもとに、各方面から事件の報告がもたらされた。一方衆議所は使いを送って受刑者を安息日中、釘づけにしたままにしておかぬために、そのすねを折って十字架から下ろすことを願い出た。そこで総督は数人の獄吏をそのために刑場に送った。そのあとからわたしはアリマテアのヨゼフがピラトの所に行くのを見た。かれはすでにイエスの死去を知っていた。かれはカルワリオ山からさほど離れていない所に庭を持っていた。そこには岩を穿った新しい墓があった。かれはニコデモと相談して主の遺骸をそこに埋葬することにきめた。わたしはかれが城外でその場所を検分しているのを見かけたように覚えている。その庭にはすでにかれの下僕たちがいて墓を掃除し、その内部をまだいろいろと整えていた。ニコデモはまた遺骸の埋葬に必要な布や香料を買いに二、三カ所へ出かけて行った。ヨゼフはピラトが非常におびえ、うろたえているのを見た。かれはピラトにはっきりとまた大胆に、イエスの遺骸を十字架から下ろす許しを願い出た。そして主を自分の墓に葬りたいと言った。ピラトはこの名望家が、自分があんなにまで屈辱的にはりつけに処したイエスの埋葬の許可を、かくも熱心に願い出て来たので、なおさら動揺した。そしてイエスが無罪だったことをますます意識した。しかしかれは何気ない風を装って尋ねた。「それではかれはもう死んだのか?」かれは獄吏をわずか二、三分前に受刑者のすねを折って殺すために遣わした所であった。そこでかれは隊長アベナダルを呼びよせ、ユダヤ人の王はもはや死んだかどうかを尋ねた。隊長はピラトに主のご死去、その最後の言葉と高らかな叫び、地震、岩が破壊されたことなどを語った。ピラトは、十字架に釘づけられた者はたいていもった長く生きられるのに、主がかくも速やかに死去されたことに驚いたような振りをした。しかし内心彼はいろいろのはっきりとしたしるしが、イエスのご死去の際に起こったことを知って不安を覚え、動揺をかくせなかった。おそらく自己の残忍性をいくらかでも償うつもりであったのであろう - かれはすぐヨゼフにイエスの死骸を十字架から下ろし、埋葬する全面的な許可を文書で交付した。かれはかくすることによって大祭司を怒らせることが出来るのを喜んだ。かれらはきっとイエスが殺人犯といっしょの不名誉な埋葬で、片づけられることを望んでいたに違いないからである。 アリマテアのヨゼフは総督のもとを去り、自分を待ち合わせているニコデモの所に行った。ニコデモはある善良な婦人の所でヨゼフを待っていた。この婦人は香料を商っていた。ヨゼフはすでにイエスの死骸を整えるためにそこでいろいろなものを買い求めていた。そこの家にないものは婦人がわざわざよそから買って来てくれた。それは各種の香料、いろいろの布、縛る布であった。これらを彼女は便利に持ち運び出来るような包みにした。ヨゼフはさらに非常にきれいで上等な木綿地を買いに自らもう一度出かけた。それは長さ3メートル60センチ、幅1メートル50センチくらいのものであった。この婦人の下男たちはニコデモの家のそばの小屋から、はしご、かなづち、目釘、水をいれる革袋、容器、海綿などのいろいろな必要品を持って来た。かれらはこれらのものを軽い担架に入れた。その担架はヨハネの弟子たちが師の死骸を、マケルスから運び出す時に使ったのと同じようなものだった。