十六 イエス、カイファの家に引かれたもう

カイファの館は、アンナの館から約三百歩足らずの距離の所にあった。イエスはカイファの館へ行く間、始めから終わりまで恥ずかしめられた。カイファの建物の内とその周囲は、至る所たいまつとランプが燃えていたので、あたかも昼のような明るさであった。その上、前庭の中央には大きな火の穴があり、火が赤々と燃えていた。この火のまわりには兵卒、法廷の小使い、買収された証人、あらゆる乱暴者どもがひしめいていた。その中には女さえも混じっていた。かの女らのうちの何人かは悪い女だった。かの女たちは赤い色の飲み物を注いで出したり、兵卒らに菓子を売ったりしていた。そこはまるでカーニバルの時のようなドンチャン騒ぎであった。召集された大部分の者は大祭司のカイファのまわりに椅子に腰を下ろしていた。いたるところに、また今さっき入って来たのもいた。告発者と偽証人は広場がほとんどいっぱいにつまるほど非常に大勢だった。イエスが到着する少し前にヨハネとペトロも来た。ヨハネは大祭司の知り合いだったので、イエスと一緒に大祭司の屋敷の中庭に入ったが、 ペトロは門の外に立っていた。大祭司の知り合いであるヨハネは、出て来て門番の女に話し、ペトロを中に入れた。そして広場の群衆の間にこっそりと立った。カイファは裁判長の椅子に座った。そのまわりにはすでに七十人の衆議所の議員が席についていた。そしてかれらのまわりを多くの偽証人、ならず者が取りまいていた。その他大勢の兵卒が特に一行の通って来る門から法廷の席までの間に配置されていた。カイファは意地悪極まりない顔をした老人であった。かれは金色の花と房のついた黒味がかった赤い長いマントを着て、浅い司教の帽子に似た帽子をかぶっていた。