聖母マリアへのまことの信心 6章 レベッカとヤコブ、聖マリアとその愛の奴隷

短く、まとめています。

第一節 ヤコブの歴史 

母レベッカの心づかいと世話によって、父イサクから祝福を受けたヤコブの話を、聖書は記している。

そこに、聖マリアとその愛の奴隷の前表を見ることができる。



エサワが弟ヤコブに長子権を売ったので、ヤコブを深く愛していた母親のレベッカは、何年か後に、奥義に満ちた策略をねって、その長子権をヤコブの手に入れさせることに成功した。

エサワ、ヤコブに長子権を売る


話はこうである。父親イサクは、大層な老齢であったので、死ぬ前に、息子たちを祝福しようと考えた。

ある日、愛していた兄エサワを呼び、狩りに行って何か食べられるものを取って来いと命じ、そのあとで祝福を与えようと言った。

レベッカ、イサクがエサワに祝福を与えようとすることを知る

それを知った母親レベッカは、さっそくヤコブを呼んで、すぐ山羊の群れの中から二頭の子山羊をとっておいでと命じた。ヤコブはすぐにそうした。

レベッカは、ヤコブに、二頭の子山羊をとってくるように命じる


そしてレベッカは、その子山羊を使って、イサクの大好物であった食事をつくった。それから、自分が持っていたエサワの服をヤコブに着せ、彼の手と首とを、子山羊の皮でおおった。

レベッカ、イサクの大好物の食事をつくる


それから、自分が持っていたエサワの服をヤコブに着せ、彼の手と首とを、子山羊の皮でおおった。

レベッカ、ヤコブに、エサワの服を着せ、子山羊の皮で覆う



父親のイサクは、もう目が見えなかったので、ヤコブの声を聞いても、その毛深い手触りから、ヤコブをエサワと考えるだろうと思ったからであった。

果たして、イサクは、エサワだと思ったのが、ヤコブの声だったので驚き、近寄らせて、首と手との子山羊の皮をなで、「声はヤコブの声だが、腕はエサワの腕だ」と言った。

イサク、「声はヤコブの声だが、腕はエサワの腕だ」


それから、イサクは、準備された食事をした。

イサクは、レベッカのつくった食事をとる


その後、イサクは、ヤコブに接吻し、その服の香りをかいだので、エサワだと思って祝福を与え、天の露と地上の豊かさとを約束し、彼を兄弟の頭として立て、「あなたを呪う者は、呪われ、あなたを祝福する者は、祝福されよ!」と言って祝福を終わった。

イサク、ヤコブを祝福する



そう言い終わったとき、エサワが、狩りでとったものを持って入って来て、父の祝福を願った。

聖なる太祖イサクは、起こったことの間違いを知って、はっと驚いたが、これが神の干渉によるものだと知って、前言を取り消さないのみか、かえってこれを強め確認した。

ここにおいて、エサワは、聖書にあるとおり、身をふるわして怒り、弟の策略を非難し、父に向かって祝福は一つだけかと聞いた。

教父たちが言う通り、このエサワは、神と世間とを和睦させ、天の慰めと地上の慰めを同時に持とうと望む人々の前表である。

父親イサクは、エサワの叫び声にまけて、気の毒に思い、彼にも祝福を与えたが、それは地上の祝福だけであって、地位も、ヤコブの下であった。

このためにエサワの恨みは深く、父の死を待って、ヤコブを殺そうとねらった。

エサワ、ヤコブを殺そうとねらう



レベッカ、ヤコブを助ける



愛する母レベッカのよい勧めを守らず、また母がことごとに、彼を助けなかったら、ヤコブはとうてい死を避けることはできなかったであろう。

第二節 亡びる人の前表エサワ、救われる人の前表ヤコブ 

亡びる人の前表エサワ 


エサワの特徴

  1. 屈強な若者で、弓矢にすぐれ、狩りに巧みであった。 
  2. ほとんど家におらず、腕に自信を持っていたので、外でだけ働いた。 
  3. 母親のレベッカを喜ばせるために、何かしようとは決して考えなかった。 
  4. 貪食で、あじ豆の一皿のために、長子権を売ったほどであった。 
  5. カインのように弟を妬み、ひまがあればヤコブをいじめていた。 

それこそ、亡びる人々の日々の行動である。

亡びる人の特徴 

  1. 地上の俗事を取り計らうことに巧みで、よく目がきくが、天のことに関しては、ほとんど盲目で無知である。
  2. 世間から離脱すること、精神生活、内的信心を好まない。
  3. 救われる人の母である聖母の信心に関心を持たない。ヤコブのような深い愛をおん母に対して持たない。
  4. 自分の長子権、つまり天国の幸福を、あじ豆の一皿、つまり世間の快楽のために売る。
  5. 日々、公にあるいはひそかに、救われるべき人々を憎んで迫害する。



救われる人の前表ヤコブ 

ヤコブの特徴

  1. 体もあまり強くなく情け深い人であったから、多くは家に留まって、愛する母レベッカを喜ばせようとしていた。
  2. 母を敬い愛していた。そして母の気に入らないことを絶対にせず、気に入ることを何でも行おうとしていた。
  3. どんな場合にも、愛する母に従順だった。
  4. 母を信用していた。自分の腕には少しも信頼を置かず、母の保護と世話だけを信じていた。
  5. できるだけ、母の徳をまねた。

これによって彼は、父親の二重の祝福を受けるのにふさわしい者となった。 

救われる人の特徴

  1. 静寂を好む内的な人間であり、祈りの生活をするが、おん母おとめ聖マリアの模範に従って生きる。
  2. 心の底から、マリアを愛する。
  3. イエズス・キリストの模範に従い、御母マリアにまったく服従する。
  4. 聖母の慈しみと力とに対して、絶大な信用を持っている。
  5. よいおん母の徳をまねようとする。


第三節 忠実なしもべに対する聖母の態度 

A 聖母は彼らを愛される 

聖母が、ご自分の忠実なしもべを、愛される理由

マリアが彼らを愛されるのは、

「彼らが、

  1. 聖母の子供である
  2. よい母として聖母を、愛している
  3. 救われるべき人々として、神に愛されている
  4. マリアの所有物、遺産である

からである。」


マリアの愛は、全世界のすべての母親が、子供に対して持っている愛情を、一人の母に結集したものよりも、はるかに大きい。




 マリアが、ご自分の子供たちに、天のおん父の祝福を得させるために行うこと 

マリアは、レベッカのように、ご自分の子らに善を与え、偉大にし、富ませるために、よい機会を持っておられる

すべての善と悪、幸福と不幸、神の祝福と呪いとを見ておられるマリアは、ご自分のしもべが、悪を避け、善で満たされるように前から準備なさっている。

それで、もしよい機会があれば、忠実に崇高な使命を果たすことができる恵みを、あるしもべに分けられるのである。


②レベッカが、ヤコブに対してそうであったように、マリアも、マリアの子たちによいすすめを与えられる。

「息子よ、私の言い付けに従い、私の言う通りにしなさい」。

わけても、ご自分に、二頭の子山羊、つまり、

私たちの体と霊魂とを捧げ、神の好まれる美味な食べ物とすることをすすめられる。

また、おん子イエズス・キリストが、み言葉と行いとをもって教えられたすべてのことを踏み行えとすすめられる。


③体と霊魂と、それに属するすべてを、無条件で聖母に捧げるとき、聖母がなされること

ヤコブがもってきた二頭の子山羊を、レベッカがどうしたかによってわかる

  1. その人を「古いアダム」の生活から死なせる。
  2. その人の自愛心と自分自身、悪い傾き、被造物に対する執着などの皮をはぐ。
  3. 汚れと欠点と罪を洗い清める。
  4. 神の味覚と、神のより偉大な栄光のために、その人を調理する。神の味覚と、その偉大な栄光をことごとく知っているのは、マリアだけであるから、そのしもべの体と霊魂とを、神のみ前に整えられるのは、また、マリアだけである。



おん母は、その人が、神のみ前に出られるように、身なりをととのえる。

(a)聖母は、その人に、清潔な、新しい、香りのある、高価なイエズスの服を着せる。

(b)聖母は、その人の首と手を、殺された子山羊の皮で覆う。その皮とは、その人自身の功徳である。

聖母はしもべたちの不完全さ、不潔さをすべて清め、その人の善業を増加させてくださる。

(c)聖母は、ご自分の功徳と徳とを分け与えて、その美しさをいっそう際立たせてくださる。

聖母の忠実なしもべは、聖母の服と、おん子の服と、「二重の服で飾られている」。


⑤聖母は、その人たちが、弟あるいは養子であって、順番から言えば長子権を受ける資格がないにもかかわらず、その人たちに、天のおん父の祝福を得させる。

新しい、高価な、香気ある服をつけ、体と霊魂とをよく整えてもらったその人は、信頼をもって、おん父のみ前に進み出る。

おん父は、その声を聞いて、罪人の声だなと考えられる。

しかし、皮でおおわれたその手に触れ、その服の香気をかぎ、おん母が準備した食事を大変喜んで食される。

それは、その人がおん子とおん母との香気ある功徳に包まれているからである。 

その結果、おん父は、その人たちに、祝福を与えられる。


B 聖母は彼らを養われる 

聖なるおん母は忠実なしもべの体と霊魂とのすべてを、ご自分から養われる。

聖母は、いと高いものの、賜物と恵みとの分配者であり管理者であるから、

それらの大部分のほとんどを、ご自分のしもべを養い育てるために与えられる。

その人たちは、喜んで、イエズスのくびきを担う。

C 聖母は彼らを導かれる 

聖母は、おん子の思し召しにしたがって、ご自分のしもべたちを導き指導される。

レベッカは、愛する息子のヤコブを導き、しばしば、よい勧めを与えた。

それは、父の祝福をヤコブの上にくだらせ、兄のエサワの憎みから、ヤコブを守るためであった。

聖母マリアに従順に従うならば迷うことがない、なぜなら

「聖母マリアは、

  • ご自分の忠実なしもべたちを導き、
  • 永遠の生命の道をさし示し、
  • 危険を避けさせ、
  • 手をとって正義の小道に案内し、
  • 倒れそうになるときには支え、
  • 倒れたときには立ち上がらせ、
  • 過ったときには愛をもって叱責し、
  • 愛するゆえに罰することもある。

指導者であり母であるマリアに従順であるなら、どうして迷うことができようか?」

マリアに導かれるしもべには、悪魔とその迷い、異端者とその謬説は、入ることができない。

D 聖母は、彼らを守り、保護される 

聖母は、忠実な子供たちとしもべたちを、敵から守り、保護される。

レベッカは、注意を怠らず、巧妙な策を使って、ヤコブをその危険から守った。その危険とは、兄エサワのねたみと憎しみであって、油断をすれば、死を免れなかったであろう。

救われる人々のよい母マリアは、親鳥がひな鳥を隠すように、その翼の下に隠す。

そして、その人たちに下って話しかけ、その人たちの弱さに同情して、「武装した軍隊のように力強く」、その人たちのかたわらにあって、守られるのである。

整備された十万の軍隊を持っていれば、恐れる敵はないであろう。

天下無敵の力とご保護とを持たれるマリアの忠実なしもべには、なおさら恐れる敵はないであろう。

このよいおん母、威力ある天の姫君は、ご自分の忠実なしもべの一人が、敵の力と数と悪との前に降伏するのを見るよりも、むしろ、その一人を守るために、何百万の天使軍の陣頭に立つであろう。

E 聖母は、彼らのために、取り次がれる 

聖母は、ご自分の忠実なしもべのために、おん子のみ前に取り次ぎ、ご自分の祈りでなだめ、密接におん子に一致させ、そこに止まらせになる。

レベッカは、ヤコブを父の床に近寄らせた。よい父は、ヤコブに触れ、抱き、そして、よく整えられた美味な食事を喜んで食べ、その後、ヤコブの服の香りをかいで、満足してヤコブに接吻し、そして言った。「ああ、私の子の香りは、主が祝福なさった田畑の香りのようだ」。

この野の香りは、マリアの徳と功徳以外の何ものでもない。

父なる神が、救われる人々の種として、おんひとり子を播かれたところの、恵みに満ちあふれる畑とは、他ならぬマリアである。

マリアのよい香りに満たされた人々は、イエズス・キリストに歓迎され、密接にイエズス・キリストと一致する。

聖母は、ご自分の忠実なしもべたちを、恵みで満たし、天の祝福をくだらせ、イエズス・キリストと一致させたのであるから、その人たちを、イエズス・キリストに止まらせ、また、イエズス・キリストを、その人たちに止まらせるのである。

その人たちが、神の恵みを失い、敵の罠に落ちないように、終始警戒される。聖母は、義人たちを、その徳にとどめ、最後までその道を続けるよう守られるのである。