イエスの受難 聖書から

2019年9月13日

聖アウグスティヌスによると4福音書の受難の記載は、ある福音書では詳しく、他の所では簡単に書いたり、省略していたりする。4福音書をよく読むことで一つの内容になるという。それで「イエスの受難を幻に見て」の順序で4福音書にかかれていることを抜き出してまとめてみました。

1 ゲッセマネで祈る

過越の食事と聖体を制定し拝領が終えたあと、一同は賛美の歌を歌ってから、オリーブの山へ出かけていった。やがて、イエスは弟子たちと一緒にゲツセマネという所にお着きになった。

イエスは彼らに「わたしが向こうへ行って祈っている間、ここに座っていなさい」と言われ、ペトロ、ヤコブ、ヨハネを伴われたが、そのとき、悲しみもだえ始められた。 

そして、彼らに言われた。「わたしは死ぬばかりに悲しい。ここを離れず、わたしと共に目を覚ましていなさい。そして誘惑に陥らないように祈りなさい」  

イエスは石を投げて届くほどの所に離れ、ひざまずいてこう祈られた「父よ、御心なら、この杯をわたしから取りのけてくださいしかし、わたしの願いどおりではなく、御心のままに」 

それから、弟子たちのところへ戻って御覧になると、彼らは眠っていたので、ペトロに言われた。「あなたがたはこのように、わずか一時もわたしと共に目を覚ましていられなかったのか。誘惑に陥らぬよう、目を覚まして祈っていなさい。心は燃えても、肉体は弱い」。 

更に、二度目に向こうへ行って祈られた。「父よ、わたしが飲まないかぎりこの杯が過ぎ去らないのでしたら、あなたの御心が行われますように」。再び戻って御覧になると、弟子たちは眠っていた。ひどく眠かったのである。 彼らは、イエスにどう言えばよいのか、分からなかった。

イエスは、彼らを離れ、また向こうへ行って、三度目も同じ言葉で祈られた。
「父よ、御心なら、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、御心のままに行ってください」。 

すると、天使が天から現れて、イエスを力づけた。イエスは苦しみもだえ、いよいよ切に祈られた。汗が血の滴るように地面に落ちた。 

イエスが祈り終わって立ち上がり、弟子たちのところに戻って御覧になると、彼らは悲しみの果てに眠り込んでいた。

イエスは言われたなぜ眠っているのか。誘惑に陥らぬよう、起きて祈っていなさい。なぜなら、時が来た。人の子は罪人たちの手に引き渡される。立て、行こう見よ、わたしを裏切る者が来た」。 

2 裏切られ、逮捕される

イエスがまだ話しておられると、十二人の一人であるユダがやって来た。祭司長たちや民の長老たちの遣わした大勢の群衆も、剣や棒を持って一緒に来た。 

イエスは御自分の身に起こることを何もかも知っておられ、進み出て、「だれを捜しているのか」と言われた。 

彼らが「ナザレのイエスだ」と答えると、イエスは「わたしである」と言われた。イエスを裏切ろうとしていたユダも彼らと一緒にいた。 

イエスが「わたしである」と言われたとき、彼らは後ずさりして、地に倒れた。 

そこで、イエスが「だれを捜しているのか」と重ねてお尋ねになると、彼らは「ナザレのイエスだ」と言った。 

すると、イエスは言われた。「『わたしである』と言ったではないか。わたしを捜しているのなら、この人々は去らせなさい。」 

イエスを裏切ろうとしていたユダは、「わたしが接吻するのが、その人だ。捕まえて、逃がさないように連れて行け」と、前もって合図を決めていた。 

ユダはやって来るとすぐに、イエスに近寄り、「先生、こんばんわ」と言って接吻した。 

イエスは、「ユダ、あなたは接吻で人の子を裏切るのか」と言われた。 

イエスの周りにいた人々は事の成り行きを見て取り、「主よ、剣で切りつけましょうか」と言った。 

シモン・ペトロは剣を持っていたので、それを抜いて大祭司の手下に打ってかかり、その右の耳を切り落とした。手下の名はマルコスであった。 

そこで、イエスは言われた。「剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる。 わたしが父にお願いできないとでも思うのか。お願いすれば、父は十二軍団以上の天使を今すぐ送ってくださるであろう。しかしそれでは、必ずこうなると書かれている聖書の言葉がどうして実現されよう。」と言い、その耳に触れていやされた。  

それからイエスは、押し寄せて来た祭司長、神殿守衛長、長老たちに言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持ってやって来たのか。わたしは毎日、神殿の境内で一緒にいたのに、あなたたちはわたしに手を下さなかった。だが、今はあなたたちの時で、闇が力を振るっている。」  

このとき、弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げてしまった。

そこで一隊の兵士と千人隊長、およびユダヤ人の下役たちは、イエスを捕らえて縛った。

3 イエス、大祭司アンナスのもとに連行され、尋問を受ける。

一隊の兵士と千人隊長、およびユダヤ人の下役たちは、イエスを、まず、アンナスのところへ連れて行った。彼が、その年の大祭司カイアファのしゅうとだったからである。 

大祭司アンナスはイエスに弟子のことや教えについて尋ねた。 

イエスは答えられた。「わたしは、世に向かって公然と話した。わたしはいつも、ユダヤ人が皆集まる会堂や神殿の境内で教えた。ひそかに話したことは何もない。なぜ、わたしを尋問するのか。わたしが何を話したかは、それを聞いた人々に尋ねるがよい。その人々がわたしの話したことを知っている。」 

イエスがこう言われると、そばにいた下役の一人が、「大祭司に向かって、そんな返事のしかたがあるか」と言って、イエスを平手で打った。 

イエスは答えられた。「何か悪いことをわたしが言ったのなら、その悪いところを証明しなさい。正しいことを言ったのなら、なぜわたしを打つのか。」 

アンナスは、イエスを縛ったまま、大祭司カイアファのもとに送った。 

4 イエス、大祭司カイアファのもとに連行され、最高法院で裁判を受ける

人々はイエスを、大祭司カイアファのところへ連れて行った。そこには、律法学者たちや長老たちが集まっていた。

祭司長たちと最高法院の全員は、死刑にするためイエスにとって不利な証言を求めたが、得られなかった。多くの者がイエスに不利な偽証をしたが、その証言は食い違っていたからである。

すると、数人の者が立ち上がって、イエスに不利な偽証をした。 「この男が、『わたしは人間の手で造ったこの神殿を打ち倒し、三日あれば、手で造らない別の神殿を建ててみせる』と言うのを、わたしたちは聞きました。」 しかし、この場合も、彼らの証言は食い違った。 

そこで、大祭司カイアファは立ち上がり、真ん中に進み出て、イエスに尋ねた。「何も答えないのか、この者たちがお前に不利な証言をしているが、どうなのか。」 しかし、イエスは黙り続け何もお答えにならなかった。そこで、重ねて大祭司は尋ね、「お前はほむべき方の子、メシアなのか」と言った。 

イエスは言われた。「それは、あなたが言ったことです。しかし、わたしは言っておく。あなたたちはやがて、人の子が全能の神の右に座り、天の雲に乗って来るのを見る。」 

そこで、大祭司は服を引き裂きながら言った。「神を冒涜した。これでもまだ証人が必要だろうか。諸君は今、冒涜の言葉を聞いた。どう思うか。」

人々は、「死刑にすべきだ」と答えた。そして、イエスの顔に唾を吐きかけ、こぶしで殴り、ある者は平手で打ちながら、 「メシア、お前を殴ったのはだれか。言い当ててみろ」と言った。 

5 ペトロ、イエスを知らないと言う

シモン・ペトロとヨハネは、遠く離れてイエスに従った。ヨハネは大祭司の知り合いだったので、イエスと一緒に大祭司の屋敷の中庭に入ったが、ペトロは門の外に立っていた。大祭司の知り合いであるヨハネは、出て来て門番の女に話し、ペトロを中に入れた。  

僕や下役たちは、寒かったので炭火をおこし、そこに立って火にあたっていた。ペトロは下の中庭で彼らと一緒に火にあたっていた。そこへ一人の女中が近寄って来て、「あなたもガリラヤのイエスと一緒にいた」と言った。 

ペトロは皆の前でそれを打ち消して、「違う、何のことを言っているのか、わたしには分からない」と言った。  

ペトロが門の方に行くと、鶏が鳴いた。ほかの女中はペトロを見て、居合わせた人々に、「この人はナザレのイエスと一緒にいました」と言った。 

そこで、ペトロは再び、「違う、そんな人は知らない」と誓って打ち消した。

しばらくして、今度は、居合わせた人々がペトロに行った。「確かに、お前もあの連中の仲間だ。言葉遣いでそれが分かる。」

また、大祭司の僕の一人で、ペトロに片方の耳を切り落とされた人の身内の者が言った。「園であの男と一緒にいるのを、わたしに見られたではないか。」 

そのとき、ペトロは呪いの言葉さえ口にしながら、「そんな人は知らない」と誓い始めた。するとすぐ、鶏が鳴いた。 

ペトロは、「鶏が二度鳴く前に、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」と言われたイエスの言葉を思い出した。そして外に出て、激しく泣いた。

6 夜が明け、再び最高法院で裁判を受ける。 

夜が明けると、民の長老会、祭司長たちや律法学者たちが集まった。そして、イエスを最高法院に連れ出して、「お前がメシアなら、そうだと言うがよい」と言った。
 
イエスは言われた。「わたしが言っても、あなたたちは決して信じないだろう。わたしが尋ねても、決して答えないだろう。しかし、今から後、人の子は全能の神の右に座る。」 
 
そこで皆の者が、「では、お前は神の子か」と言うと、イエスは言われた。「わたしがそうだとは、あなたたちが言っている。」 
 
人々は、「これでもまだ証言が必要だろうか。我々は本人の口から聞いたのだ」と言った。
 

7 ピラトから尋問される

そこで、全会衆が立ち上がり、イエスを縛ってピラトのもとに連れて行った。明け方であった。しかし、彼らは自分では官邸に入らなかった。汚れないで過越の食事をするためである。

そこで、ピラトが彼らのところへ出て来て、「どういう罪でこの男を訴えるのか」と言った。

彼らは答えて、「この男が悪いことをしていなかったら、あなたに引き渡しはしなかったでしょう」と言った。

ピラトが、「あなたたちが引き取って、自分たちの律法に従って裁け」と言うと、ユダヤ人たちは、「わたしたちには、人を死刑にする権限がありません」と言った。

そこで、ピラトはもう一度官邸に入り、イエスを呼び出して、「お前がユダヤ人の王なのか」と言った。

イエスはお答えになった。「あなたは自分の考えで、そう言うのですか。それとも、ほかの者がわたしについて、あなたにそう言ったのですか。」 

ピラトは言い返した。「わたしはユダヤ人なのか。お前の同胞や祭司長たちが、お前をわたしに引き渡したのだ。いったい何をしたのか。」

イエスはお答えになった。「わたしの国は、この世には属していない。もし、わたしの国がこの世に属していれば、わたしがユダヤ人に引き渡されないように、部下が戦ったことだろう。しかし、実際、わたしの国はこの世には属していない。」 

そこでピラトが、「それでは、やはり王なのか」と言うと、イエスはお答えになった。「わたしが王だとは、あなたが言っていることです。わたしは真理について証しをするために生まれ、そのためにこの世に来た。真理に属する人は皆、わたしの声を聞く。」

ピラトは言った。「真理とは何か。」ピラトは、こう言ってからもう一度、ユダヤ人たちの前に出て来て言った。「わたしはあの男に何の罪も見いだせない。」

それを聞いた祭司長たちは、いろいろとイエスを訴えた。ピラトは再び尋問した。「何も答えないのか。彼らがあのようにお前を訴えているのに」。しかし、イエスがもはや何もお答えにならなかったので、ピラトは不思議に思った。

祭司長たちは、「この男は、ガリラヤから始めてこの都に至るまで、ユダヤ全土で教えながら、民衆を扇動しているのです」と言い張った。 

8 ヘロデから尋問される

これを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ね、 ヘロデの支配下にあることを知ると、イエスをヘロデのもとに送った。ヘロデも当時、エルサレムに滞在していたのである。
 
彼はイエスを見ると、非常に喜んだ。というのは、イエスのうわさを聞いて、ずっと以前から会いたいと思っていたし、イエスが何かしるしを行うのを見たいと望んでいたからである。 
 
それで、いろいろと尋問したが、イエスは何もお答えにならなかった。
 
祭司長たちと律法学者たちはそこにいて、イエスを激しく訴えた。 
 
ヘロデも自分の兵士たちと一緒にイエスをあざけり、侮辱したあげく、派手な衣を着せてピラトに送り返した。 
 

9 イエスかバラバか。鞭打ちの刑

イエスが戻ると、ピラトは、祭司長たちと議員たちと民衆とを呼び集めて、 言った。
 
「あなたたちは、この男を民衆を惑わす者としてわたしのところに連れて来た。わたしはあなたたちの前で取り調べたが、訴えているような犯罪はこの男には何も見つからなかった。ヘロデも同じであった。それで、我々のもとに送り返してきたのだが、この男は死刑に当たるようなことは何もしていない。 だから、鞭で懲らしめて釈放しよう。」  
 
ところで、祭りの度ごとに、総督は民衆の希望する囚人を一人釈放することにしていた。さて、暴動のとき人殺しをして投獄されていた暴徒たちの中に、バラバ・イエスという評判の囚人がいた。 
 
群衆が押しかけてきて、いつものようにしてほしいと要求し始めた。
 
ピラトは、人々が集まって来たときに言った。「どちらを釈放してほしいのか。バラバ・イエスか。それともメシアといわれるイエスか。」 
 
人々がイエスを引き渡したのは、ねたみのためだと分かっていたからである。 一方、ピラトが裁判の席に着いているときに、妻から伝言があった。「あの正しい人に関係しないでください。その人のことで、わたしは昨夜、夢で随分苦しめられました。」 
 
(ピラトが妻の伝言を聞くために席を外している間)祭司長たちや長老たちは、バラバを釈放して、イエスを死刑に処してもらうようにと群衆を説得した。 
 
もどってきて再び、総督が、「二人のうち、どちらを釈放してほしいのか」と言うと、人々は、「バラバを」と言った。 
 
ピラトは「では、メシアといわれているイエスの方は、どうしたらよいか」と言うと、皆は、「十字架につけろ」と言った。
 
ピラトはイエスを釈放しようとして言った。「いったいどんな悪事を働いたというのか。」群衆はますます激しく、「十字架につけろ」と叫び立てた。 
 
ピラトは言った。「いったい、どんな悪事を働いたと言うのか。この男には死刑に当たる犯罪は何も見つからなかった。だから、鞭で懲らしめて釈放しよう。」
 
ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバを釈放した。そして、イエスを捕らえ、鞭で打たせた。
 

10 兵士から侮辱される。茨の冠

(鞭打ちの後、)兵士たちは、官邸、すなわち総督官邸の中に、イエスを引いて行き、部隊の全員を呼び集めた。 
 
そして、イエスに紫の服を着せ、右手に葦の棒を持たせて、茨の冠を編んでかぶらせ、「ユダヤ人の王、万歳」と言って敬礼し始めた。 
 
また何度も、葦の棒で頭をたたき、唾を吐きかけ、ひざまずいて拝んだりした。
 
 

11 死刑判決を受ける

ピラトはまた出て来て、言った。「見よ、あの男をあなたたちのところへ引き出そう。そうすれば、わたしが彼に何の罪も見いだせないわけが分かるだろう。」 
 
イエスは茨の冠をかぶり、紫の服を着けて出て来られた。ピラトは、「見よ、この男だ」と言った。 
 
祭司長たちや下役たちは、イエスを見ると、「十字架につけろ。十字架につけろ」と叫んだ。ピラトは言った。「あなたたちが引き取って、十字架につけるがよい。わたしはこの男に罪を見いだせない。」 
 
ユダヤ人たちは答えた。「わたしたちには律法があります。律法によれば、この男は死罪に当たります。神の子と自称したからです。」 
 
ピラトは、この言葉を聞いてますます恐れ、 再び総督官邸の中に入って、「お前はどこから来たのか」とイエスに言った。しかし、イエスは答えようとされなかった。
 
そこで、ピラトは言った。「わたしに答えないのか。お前を釈放する権限も、十字架につける権限も、このわたしにあることを知らないのか。」 
 
イエスは答えられた。「神から与えられていなければ、わたしに対して何の権限もないはずだ。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪はもっと重い。」 
 
そこで、ピラトはイエスを釈放しようと努めた。しかし、ユダヤ人たちは叫んだ。「もし、この男を釈放するなら、あなたは皇帝の友ではない。王と自称する者は皆、皇帝に背いています。」 
 
再びピラトがユダヤ人たちに、「見よ、あなたたちの王だ」と言うと、彼らは叫んだ。「殺せ。殺せ。十字架につけろ。」
 
ピラトが、「あなたたちの王をわたしが十字架につけるのか」と言うと、祭司長たちは、「わたしたちには、皇帝のほかに王はありません」と答えた。
 
ピラトは、それ以上言っても無駄なばかりか、かえって騒動が起こりそうなのを見て、水を持って来させ、群衆の前で手を洗って言った。「この人の血について、わたしには責任がない。お前たちの問題だ。」 
 
民はこぞって答えた。「その血の責任は、我々と子孫にある。」
 
ピラトは、これらの言葉を聞くと、イエスを外に連れ出し、ヘブライ語でガバタ、すなわち「敷石」といわれる裁判の席に着かせ、十字架につけるために、イエスを彼らに引き渡した。
 

12 十字架の道行き

人々はイエスを引いて行く途中、アレクサンドロとルフォスとの父でシモンというキレネ人が、田舎から出て来て通りかかったので、兵士たちはイエスの十字架を無理に担がせた。 
 
民衆と嘆き悲しむ婦人たちが大きな群れを成して、イエスに従った。イエスは婦人たちの方を振り向いて言われた。
 
「エルサレムの娘たち、わたしのために泣くな。むしろ、自分と自分の子供たちのために泣け。 人々が、『子を産めない女、産んだことのない胎、乳を飲ませたことのない乳房は幸いだ』と言う日が来る。 そのとき、人々は山に向かっては、『我々の上に崩れ落ちてくれ』と言い、丘に向かっては、『我々を覆ってくれ』と言い始める。『生の木』さえこうされるのなら、『枯れた木』はいったいどうなるのだろうか。」 
 
ほかにも、二人の犯罪人が、イエスと一緒に死刑にされるために、引かれて行った。 
 

13 十字架につけられる

ゴルゴタという所、すなわち「されこうべの場所」に着くと、 苦いものを混ぜたぶどう酒を飲ませようとしたが、イエスはなめただけで、飲もうとされなかった。 
 
それから、兵士たちはイエスを十字架につけて、その服を分け合った、だれが何を取るかをくじ引きで決めてから、そこに座って見張りをしていた。 
 
イエスの頭の上には、「これはユダヤ人の王イエスである」と書いた罪状書きを掲げた。折から、イエスと一緒に二人の強盗が、一人は右にもう一人は左に、十字架につけられていた。
 
そこを通りかかった人々は、頭を振りながらイエスをののしって、 言った。「神殿を打ち倒し、三日で建てる者、神の子なら、自分を救ってみろ。そして十字架から降りて来い。」 
 
同じように、祭司長たちも律法学者たちや長老たちと一緒に、イエスを侮辱して言った。「他人は救ったのに、自分は救えない。イスラエルの王だ。今すぐ十字架から降りるがいい。そうすれば、信じてやろう。 神に頼っているが、神の御心ならば、今すぐ救ってもらえ。『わたしは神の子だ』と言っていたのだから。」 
 
そのとき、イエスは言われた。「父よ、彼らをお赦しください。自分が何をしているのか知らないのです。」
 
(これを聞いた)十字架にかけられていた犯罪人の一人が、イエスをののしった。「お前はメシアではないか。自分自身と我々を救ってみろ。」 
 
すると、もう一人の方がたしなめた。「お前は神をも恐れないのか、同じ刑罰を受けているのに。 我々は、自分のやったことの報いを受けているのだから、当然だ。しかし、この方は何も悪いことをしていない。」 
 
そして、「イエスよ、あなたの御国においでになるときには、わたしを思い出してください」と言った。 
 
するとイエスは、「はっきり言っておくが、あなたは今日わたしと一緒に楽園にいる」と言われた。 
 
既に昼の十二時ごろであった。全地は暗くなり、それが三時まで続いた。 太陽は光を失っていた。
 
イエスの十字架のそばには、その母と母の姉妹、クロパの妻マリアとマグダラのマリアとが立っていた。
 
イエスは、母とそのそばにいる愛する弟子とを見て、母に、「婦人よ、御覧なさい。あなたの子です」と言われた。 
 
それから弟子に言われた。「見なさい。あなたの母です。」そのときから、この弟子はイエスの母を自分の家に引き取った。 
 

13 イエスの死

 
三時ごろ、イエスは大声で叫ばれた。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」これは、「わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
 
そこに居合わせた人々のうちには、これを聞いて、「この人はエリヤを呼んでいる」と言う者もいた。ほかの人々は、「待て、エリヤが彼を救いに来るかどうか、見ていよう」と言った。 
 
イエスは、すべてのことが今や成し遂げられたのを知り、「渇く」と言われた。こうして、聖書の言葉が実現した。
 
そこには、酸いぶどう酒を満たした器が置いてあった。人々は、このぶどう酒をいっぱい含ませた海綿をヒソプに付け、イエスの口もとに差し出した。
 
イエスは、このぶどう酒を受けると、「成し遂げられた」と言われた。
 
そして「父よ、わたしの霊を御手にゆだねます。」こう言って息を引き取られた。  
 
百人隊長がイエスの方を向いて、そばに立っていた。そして、イエスがこのように息を引き取られたのを見て、「本当に、この人は正しい人だった。本当に、この人は神の子だった」と言った。 
 
見物に集まっていた群衆も皆、これらの出来事を見て、胸を打ちながら帰って行った。 
 
イエスを知っていたすべての人たちと、ガリラヤから従って来た婦人たちとは遠くに立って、これらのことを見ていた。
 

14 イエスのわき腹を槍で突く

その日は準備の日で、翌日は特別の安息日であったので、ユダヤ人たちは、安息日に遺体を十字架の上に残しておかないために、足を折って取り降ろすように、ピラトに願い出た。 
 
そこで、兵士たちが来て、イエスと一緒に十字架につけられた最初の男と、もう一人の男との足を折った。
 
イエスのところに来てみると、既に死んでおられたので、その足は折らなかった。 
 
しかし、兵士の一人が槍でイエスのわき腹を刺した。すると、すぐ血と水とが流れ出た。 
 
それを目撃した者が証ししており、その証しは真実である。その者は、あなたがたにも信じさせるために、自分が真実を語っていることを知っている。 
 
これらのことが起こったのは、「その骨は一つも砕かれない」という聖書の言葉が実現するためであった。 
 
また、聖書の別の所に、「彼らは、自分たちの突き刺した者を見る」とも書いてある。 
 

15 墓に葬られる

その後、イエスの弟子でありながら、ユダヤ人たちを恐れて、そのことを隠していたアリマタヤ出身のヨセフが、イエスの遺体を取り降ろしたいと、ピラトに願い出た。ピラトが許したので、ヨセフは行って遺体を取り降ろした。
 
そこへ、かつてある夜、イエスのもとに来たことのあるニコデモも、没薬と沈香を混ぜた物を百リトラばかり持って来た。 
 
彼らはイエスの遺体を受け取り、ユダヤ人の埋葬の習慣に従い、香料を添えて亜麻布で包んだ。 
 
イエスが十字架につけられた所には園があり、そこには、だれもまだ葬られたことのない新しい墓があった。 
 
その日はユダヤ人の準備の日であり、この墓が近かったので、そこにイエスを納めた。