聖書入門3 出エジプト

■目次

1章 イスラエル人、エジプトで奴隷にされる 

1 イスラエル人の増加とファラオの不安

ヤコブの腰から出た子、孫の数は全部で七十人であった。ヨセフは既にエジプトにいた。ヨセフもその兄弟たちも、その世代の人々も皆、死んだが、イスラエルの人々は子を産み、おびただしく数を増し、ますます強くなって国中に溢れた。

出エジプト1・5~7

ヤコブはエジプトに移ってから死ぬまで、ヤコブの子、孫の数はたった70名であった。しかしイスラエルの民は増え続け、エジプトの国中をあふれるようにまでなった。

そのころ、ヨセフのことを知らない新しい王が出てエジプトを支配し、国民に警告した。「イスラエル人という民は、今や、我々にとってあまりに数多く、強力になりすぎた。抜かりなく取り扱い、これ以上の増加を食い止めよう。一度戦争が起これば、敵側に付いて我々と戦い、この国を取るかもしれない。」     

出エジプト1・8~12

ヨセフがエジプトのために行ったことを何も知らない王朝のファラオがエジプトを治めるようになった。イスラエル人が増えていることを不安に思ったファラオは彼らが王国の敵に協力するのではないかと恐れた。

2 イスラエル民族、エジプトで奴隷状態になる

エジプト人はそこで、イスラエルの人々の上に強制労働の監督を置き、重労働を課して虐待した。…しかし、虐待されればされるほど彼らは増え広がったので、エジプト人はますますイスラエルの人々を嫌悪し、イスラエルの人々を酷使し、…重労働によって彼らの生活を脅かした。彼らが従事した労働はいずれも過酷を極めた。 

出エジプト1・11~14

ファラオはイスラエル人を奴隷とし、重労働を課して虐待したが、虐待されればされるほど、イスラエル人は増えていった。それがエジプト人をさらに恐れさせることになり、エジプト人はますますイスラエルの人々を嫌悪し、イスラエルの人々を酷使した。このイスラエルの人々の生活は過酷なものであった。

3 ファラオの男児殺害命令 

エジプト王は二人のヘブライ人の助産婦に命じた。一人はシフラといい、もう一人はプアといった。「お前たちがヘブライ人の女の出産を助けるときには、子供の性別を確かめ、男の子ならば殺し、女の子ならば生かしておけ。」   

出エジプト1・15~16

イスラエル人の数はなおもファラオが期待したほど減らなかったため、ファラオは二人の助産婦シフラとプアに命じ、イスラエル人が女を産んだときには生かし、男のときには殺させることにした。

しかし、助産婦たちは神を畏れていたので、そのような命令には従わず、男の子を生かしておいた。

男の赤ん坊が生かされていることでファラオに呼び出されると、彼女たちはヘブライ人の女はとても早く出産するので、自分たちが行く前に産んでしまい、何もできないのだと説明した。助産婦たちのこの行為は神に喜ばれ、神はイスラエル人の人口をさらに増やした。

ファラオは全国民に命じた。「生まれた男の子は、一人残らずナイル川にほうり込め。女の子は皆、生かしておけ。」 

出エジプト1・19

困り果てたファラオは今度は全国民に命じた。生まれた男の子は、一人残らずナイル川に放り込め。女の子は皆、生かしておけという命令を発した。

ちょうどその頃、モーセが生まれた。この子はこの幼児殺害を免れ、後にイスラエルの歴史を変えることになる。 

2章 葦の茂みに隠されて 

1 モーセ、葦の茂みに隠される

モーセが生まれたのはファラオがイスラエル人の男の赤子はすべて死ななければならないと命じていた時代であった。モーセの両親は夫婦にはすでに娘ミリアムがいたが、生まれた息子をファラオの無慈悲な命令から救うために隠さなくてはならなかった。夫婦は「その子がかわいかったのを見て」(出エジプト2・2)、生後3カ月までは何とか隠したが、もはや隠し切れなくなった。そこで母親は防水の工夫をしたパピルスの籠を作り、そして、その籠の中にわが子を優しく寝かせ、川岸の葦の茂みの中に隠した。 

2 王家の者に見つけられる

母親は家に帰ったが、姉のミリアムは川岸で様子を見ていた。そこにファラオの王女が侍女を伴って水浴びにきて、葦の茂みにある籠を見つける。王女がそれを開いてみると、中では男の赤子が泣いていた。王女はただ捨てられる運命にあった赤子を不憫に思い、「これは、きっと、ヘブライ人の子です」(出エジプト2・6)と侍女に言った。 

3 王女の命令 

ミリアムはそこに飛び出ていって、王女に「この子に乳を飲ませるヘブライ人の乳母を呼んで参りましょうか」 (出エジプト2・5、6)と 申し出る。王女は同意し、ミリアムは自分の母親を連れてきた。王女は赤子を家に連れて行って養育するように言い、手当てが支払われることになった。

その子が成長すると、ファラオの王女のもとに連れて行かれ、王女の子として育てられた。こうして、将来ファラオを打ち負かすことになる少年は難なくエジプト王家の中に場所を得たのである。 

3章 モーセの召命 

1 モーセの逃亡

モーセはファラオの宮殿で40年間、特権的な地位にあり、「すばらしい話や行いをする者」(使徒7・22)であった。しかし、ある日モーセはイスラエル人のひとりを残酷に扱っていたエジプト人を見かけた。モーセは辺りを見回して誰もいないのを確認してからエジプト人を殺した。ところが翌日、モーセは自分の殺人が知れ渡っていることに気づく。モーセはそれを知るとすぐに国外に逃亡した。彼はミディアンの地に行き、祭司の娘と結婚し、息子をもうけ、40年を過ごした(出エジプト7・30)。

2 モーセの召命

ある日、モーセはホレブ山(またはシナイ山)で羊の群れを飼っていると、不思議な光景を見た。柴の間に炎が上がっていた。それなのに柴は少しも燃え尽きない。モーセは近づいて間近でそれを見た。そのとき神は柴の間から声をかける。

「モーセよ、モーセよ」と言われた。彼が、「はい」と答えると、  「ここに近づいてはならない。足から履物を脱ぎなさい。あなたの立っている場所は聖なる土地だから。」  神は続けて言われた。「わたしはあなたの父の神である。アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である」

出エジプト3・4~6

モーセはこの声を聞き、恐れて顔を覆った。神は続けてモーセに言われる。

「わたしは、エジプトにいるわたしの民の苦しみをつぶさに見、追い使う者のゆえに叫ぶ彼らの叫び声を聞き、その痛みを知った。それゆえ、わたしは降って行き、エジプト人の手から彼らを救い出し、この国から、広々としたすばらしい土地、乳と蜜の流れる土地、カナン人、ヘト人、アモリ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人の住む所へ彼らを導き上る。…今、行きなさい。わたしはあなたをファラオのもとに遣わす。わが民イスラエルの人々をエジプトから連れ出すのだ。」     

出エジプト3・7~11

神はイスラエル人がエジプトで受けている苦痛を顧み、その苦難から彼らを救い出し、彼らを約束の地に連れて行くと言い、今行けと命じられる。

モーセはその言葉に対して、自分は何者で、どうしてそのようなことをしないといけないのかと尋ねる。神はそれに対して言われる。

「わたしは必ずあなたと共にいる。このことこそ、わたしがあなたを遣わすしるしである。」

出エジプト3・12

「わたしは必ずあなたと共にいる」。そしてモーセも必ず神と共にいる人であり、モーセは神の望みを従順に行うことができるからである。

モーセはイスラエルの人々が神の名を尋ねるはずだと言った。

「わたしはあるという者だ。」

出エジプト3・14

神が明らかにしたその名はまさにその神の特性を示すものだった。神は「『わたしはある』という方がわたしをあなたたちに遣わしたのだ」と言うようにとモーセに付け加えた。神は自分が存在しないということは決してないのだと強調しようとしていた。神は常に「ある」のである。常にいて、常に働き、常に力強く、常に必要なものを与えるのである。 

3 神、ためらうモーセを説得する 

モーセは民を率いることをためらい、神の指示から逃れるための言い逃れをした。はじめは説得のため、杖をのたうつヘビに変える奇跡的なしるしを示しながら、穏やかに応答していた神だったが、最後には怒り、モーセの兄アロンを代弁者にする(出エジプト4・14~17)。ついに承服したモーセに神は再びファラオへのイスラエル人の解放要求という使命を繰り返した。しかし、神はファラオの心を頑なにして民を行かせないようにするとモーセに警告もする(出エジプト4・21)。 

4章 10の災い 

1 モーセ、エジプトに帰る

モーセはエジプトに戻ると、アロンと共にイスラエルの長老たちを集めた。アロンはモーセに与えられた神からのメッセージを伝え、神の約束を示す奇跡的なしるしを見せた(出エジプト4・1~8)。民は、先祖の神が彼らの苦しみを顧みられたことを知り、ひれ伏して礼拝した

2 ファラオとの交渉 

民にあった後、モーセはファラオのもとに赴き、「イスラエルの神、主がこう言われました。『わたしの民を去らせて、荒れ野でわたしのために祭りを行わせなさい』と」 (出エジプト5・1)と言った。ファラオはその神を知らず、奴隷を解放するつもりはないと答えた。そして、労働をより一層厳しくしたので、民はモーセとアロンに「事態は悪化した」と不平を言った。そこで神は再度モーセにまもなく民を約束の地に連れて行くと約束し、ファラオにはなお耳を傾けないようにさせ、それに対して「大いなる審判」(出エジプト7・4)で応ずるのだと告げる。 

モーセとアロンは再びファラオに神の要求を伝えたが、今度はしるしも示した。アロンが杖を地面に投げると、それが蛇になった。しかし、ファラオは呪術師に同じ奇跡をさせ、動じることはなかった。 

3 災いとファラオの頑なな心 

モーセとアロンは神の指示に従い、次の日の朝、ナイル川の岸でファラオを待った。モーセはイスラエル人の解放を繰り返しながら、主のみが神であることのしるしとして、川が血に変わると告げる。アロンが杖を振り上げると、ナイル川に血が流れるようになった。魚は死に、飲み水は腐った。これが最初の災いである。ファラオは神の力を示しても、なおモーセとアロンに耳を傾けようとしない。

次は「蛙の災い」である。アロンがナイルの上に杖をかざすと、蛙が川から出て民家を覆ってしまう。ファラオは蛙がいなくなるよう神に祈ってくれれば、イスラエル人を去らせると約束する。モーセが神に祈ると蛙は死に絶えるが、一息つくとファラオはまた頑迷さを取り戻し、約束をひるがえす。

次に「ぶよの災い」を神はエジプトに与える。しかしファラオは心が固くなり、彼らに聞かなかった。次に「あぶの災い」を与えた。ファラオはあぶを去らせれば、イスラエルの民を去らせると約束するが、モーセが神に祈りあぶを去らせたが、ファラオはまた心を頑なにし、民を去らせなかった。

次は「疫病の災い」を与えた。エジプト中の馬、ろば、らくだ、牛、羊が病気にかかり死んでしまうが、イスラエルの家畜だけは無事だった。しかしファラオの心は頑なでありイスラエルの民を去らせなかった。

次は「はれ物の災い」である。モーセがかまどのすすを両手に抱え、ファラオの前で天にむけてまき散らすと、膿の出る腫れ物が国中の人と家畜に生じた。しかしファラオは二人に聞かなかった。

次は「雹の災い」である。雹がエジプトの野を打ち、その間を絶え間なく稲妻が走った。ファラオはモーセとアロンに雹と稲妻を去らせれば、イスラエルの民を去らせると約束する。モーセが神に祈り、雹と稲妻が去ると、ファラオは心を頑なにして民を去らせなかった。

次は「いなごの災い」である。エジプトはいなごに覆われ地表は暗くなり、雹を免れたわざかな草や木の実も食い尽くされてしまう。ファラオは、自分がイスラエル人に対しても、また彼らの神に対しても、過ちを犯したと認め赦しを乞う。そしていなごを去らせればイスラエルの民を去らせると言う。モーセは神に祈り、いなごはエジプトに1匹も残らなかった。しかしファラオは再び心を頑なにし、民を去らせなかった。

次は「暗闇の災い」である。モーセが天に手をさしのべると、エジプト全土が暗闇に覆われた。3日間、エジプト人は互いの姿が見えず、身動きができなかった。しかしファラオは心を頑なにし、民を去らせなかった。

4 「初子の災い」 

災いはモーセの命令と神の意思によることは明らかで徹底破壊へと進んだ。ファラオは神に応える機会は十分に与えられていたが、モーセが神の要求を繰り返すたび、ファラオは頑固になっていく。そして、どの災いよりも破壊的な10番目の災いの到来がファラオに宣言される。

モーセは言った。「主はこう言われた。『真夜中ごろ、わたしはエジプトの中を進む。そのとき、エジプトの国中の初子は皆、死ぬ。王座に座しているファラオの初子から、石臼をひく女奴隷の初子まで。また家畜の初子もすべて死ぬ。大いなる叫びがエジプト全土に起こる。そのような叫びはかつてなかったし、再び起こることもない。』 しかし、イスラエルの人々に対しては、犬ですら、人に向かっても家畜に向かっても、うなり声を立てません。     

出エジプト11・4~7

真夜中、主はファラオの王位継承者を含むエジプトのすべての初子が打ち倒された。エジプト中の初子は死んだ。しかし、イスラエル人の初子は傷つくことはなかった。ついにファラオはイスラエル人が彼の国を去るように命じた。 

5章 過越  

モーセは最後にファラオに会いに行ったとき、神が最後の災いを送り、エジプト人の初子はすべて死に、その後、ファラオはイスラエル人を解放することになるとファラオに警告した。しかし、ファラオはなおもモーセの要求を聞き入れようとしなかったので、モーセは退出した。

その後、神はモーセに指示を与え、エジプトで神がイスラエルをどのように解放したかを想起させるために、祝祭として今後毎年行うべきことを伝えた。

「この月をあなたたちの正月とし、年の初めの月としなさい。…『今月の十日、人は…家族ごとに小羊を一匹用意しなければならない。もし、家族が少人数で小羊一匹を食べきれない場合には、隣の家族と共に、人数に見合うものを用意し、めいめいの食べる量に見合う小羊を選ばねばならない。 その小羊は、傷のない一歳の雄でなければならない。…それは、この月の十四日まで取り分けておき、イスラエルの共同体の会衆が皆で夕暮れにそれを屠り、その血を取って、小羊を食べる家の入り口の二本の柱と鴨居に塗る。そしてその夜、肉を火で焼いて食べる。また、酵母を入れないパンを苦菜を添えて食べる。…それを食べるときは、腰帯を締め、靴を履き、杖を手にし、急いで食べる。これが主の過越である。      」    

出エジプト12・3~11

この行事は、ユダヤ暦の7月15日に始まり、この日は太陽暦では4月5日から13日の間のいずれかの日にあたる。そして1週間の間行われる。

祭の最初の日、すべての家族は1歳の傷のない子羊を用意する。家族の人数によっては、隣の家族と共同でよい。3日後の夕暮れに、その子羊を屠り、真夜中になる前にその肉を料理して食べ、家の鴨居にその地を塗る。その7日の間、イスラエルは酵母なしのパンを作る。そして子羊はまるごと焼き、パンは酵母なしのまま、食事は急いで食べるのである。

その夜、わたしはエジプトの国を巡り、人であれ、家畜であれ、エジプトの国のすべての初子を撃つ。また、エジプトのすべての神々に裁きを行う。わたしは主である。あなたたちのいる家に塗った血は、あなたたちのしるしとなる。血を見たならば、わたしはあなたたちを過ぎ越す。わたしがエジプトの国を撃つとき、滅ぼす者の災いはあなたたちに及ばない。     

出エジプト12・12~13

その後、神はその夜に起こることを説明する。真夜中、死がエジプトの間を通り抜け、人間と家畜の両方の初子を撃つ。家の入口の鴨居に血が塗られていれば、その家は過ぎ越され、難を逃れる。

モーセは神が言ったことをイスラエルの長老たちに伝え、「さあ、家族ごとに羊を取り、過越の犠牲を屠りなさい」と言った(出エジプト12・21)。そして、真夜中、神が言った通りに、位の最も高い者から最も低い者に至るまで、エジプトの初子は撃たれ、「死人が出なかった家は一軒もなかった」(出エジプト12・30)。

ついにファラオは打ち砕かれ、モーセとアロンを呼び出し、すべてのエジプト人が死んでしまう前にエジプトから去るように言った。そして、イスラエル人は出発したが、まさに神が告げたように(出エジプト3・21)、エジプトを出るに際して、多くの富が与えられた。

☆新約における過越 

過ぎ越しの子羊であるキリストはすでにいけにえとなられた。

1コリント5・7

新約において、主は過ぎ越しの羊に例えられ、彼の死によって私たちは救われるとしている。

ヨハネは、自分の方へイエスが来られるのを見て言った。「見よ、世の罪を取り除く神の小羊だ。」

ヨハネ1・29

洗礼者ヨハネはキリストのことを「世の罪を取り除く神の子羊」と民衆に紹介した。

知ってのとおり、あなたがたが先祖伝来のむなしい生活から贖われたのは、金や銀のような朽ち果てるものにはよらず、きずや汚れのない小羊のようなキリストの尊い血によるのです。   

1ペトロ1・18、19

キリストの御血によって、わたしたちは買い取られる。キリストの御血によって買い取られた者は、神の罰から過ぎ越される。

6章 エジプトからの脱出 

1 ファラオの追跡 

神は昼には雲の柱、夜には火の柱によってイスラエル人を誘導した。ペシリテ人の地に向かう東への経路を避けて南に進み、それから再び北に向かって、ファラオに荒れ野でさまよっていると思わせようとした。奴隷を失ったことに気づいたファラオは考えを変え、軍を率いてイスラエル人を追った。ファラオは精鋭の洗車600台を旗手と兵士と共に招集し、イスラエル人を追い、ビ・ハヒロト近くの海辺で直営している彼らに追いついた。

イスラエル人はエジプト人を見ると、神に向かって叫び、荒れ野で死なせるために連れ出したのかとモーセを責めた。モーセは「恐れず、落ち着け」と応え、「あなたたちは今日、エジプト人を見ているが、もう二度と永久に彼らを見ることはない」(出エジプト14・13)と言い、民は神の救いを目撃すると約束した。神はその後、モーセに奇妙なことをするように言った。目の前には海が広がっているが、イスラエル人に前進するように言えというのだ。しかし、そこでモーセが杖を手に両手を広げると、水が分かれ、イスラエル人は乾いた地面の上を通過することができると言う。ファラオの軍隊が追ってきたとしても、神の偉大さが示されることになるだろう。イスラエルの先頭に立つ神の使いは雲の柱と共に民の後ろに移動し、その晩、エジプトの軍隊とイスラエル人との間に入った。雲は一晩中、片側を暗くし、もう片側に光をもたらし、両者は互いに近づくことはなかった(出エジプト14・20)。 

2 神の奇跡 

その後、モーセが海に向かって腕を伸ばすと、神は一晩中、強い東風と共に水を押し戻し、乾いた地を露わにした。水は迫り上がって両側に壁をつくり、イスラエル人に乾いた地を通過させた。エジプト軍も急いで彼らに続いて海の中へと進んだ。夜明けとともに、神はエジプトの思い戦車の車輪を動かなくした。エジプト人は神がイスラエルのために戦っていることに気づき、逃げ出そうとしたが手遅れだった。モーセが手を伸ばすと、水が戻り、エジプト軍すべてを溺死させた。頑なになったファラオの最終的な結末だった。イスラエル人は神の力を目の当たりにし、神を畏れ、神とモーセを信じた。 

7章 荒れ野にて 

1 民の不満

葦の海を渡り終えた後、モーセはシェルの荒れ野を通ってイスラエル人を南に導いた。彼らは3日移動したが、水が見つからなかった。マラ(「苦い」という意味)という場所に着くと、水はあったが、飲めない水であった。神に試されているとも知らず、民はモーセに不満を言った。モーセが民のもとに行くと、神は木片を水の中に投げ入れるように命じられ、水は甘くなった。 

2 荒れ野でうずらとマナが与えられる

エジプトを出てから1カ月後、民はツィンの荒れ野に着くと、食べ物がないことで不平を言う。奴隷であったことを忘れ、「エジプトの国で、主の手にかかって、死んだ方がましだった。あのときは肉のたくさん入った鍋の前に座り、パンを腹いっぱい食べられたのに。あなたたちは我々をこの荒れ野に連れ出し、この全会衆を飢え死にさせようとしている」 (出エジプト16・3)と嘆いた。

そこで神は天から食べ物を降らせると告げ、そう民に伝えて安心させるようにとモーセに言う。

夕方になると、うずらが飛んで来て、宿営を覆い、朝には宿営の周りに露が降りた。この降りた露が蒸発すると、見よ、荒れ野の地表を覆って薄くて壊れやすいものが大地の霜のように薄く残っていた。  

出エジプト16・14

うずらは肉として、霜のようなものはマナ(それは何かの意味)と名づけられたパンとして人々を養う。このように民は「夕暮れには肉を食べ、朝にはパンを食べ」(出エジプト16・12)ることになる。

その食物はその日の分だけを集めることになっていたが、6日目には2倍集めてよかった。神の指示を護らず、必要以上に集めると、余分なマナは腐った。ここで7日目ごとの安息日には食糧集めに奔走しないで休息する、という約束をも守らせる。イスラエル人は40年マナを与えられた(ヨシュア5・12)。

3 岩から水 

レフィディムでまた水がなくなると、民はモーセに石を投げつけて殺そうとした。神が杖で岩を打てと命じると、水が湧き出た。そこでモーセはその地をマサ(「試し」)とメリバと名付けた。イスラエル人が神は本当に自分たちと共にいるかをそこで問うたからである。 

8章 十戒 

1 シナイ山における神の到来

イスラエル人はエジプトを出発してから3か月後、シナイ山に到着した。そこは神がモーセに初めて自らを現わした場所だった。モーセが神のもとに登って行くと、神は濃い雲の中から彼に語りかけて言われた。「今、もしわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るならば、あなたたちはすべての民の間にあって、わたしの宝となる」(出エジプト19・5)。モーセは山から戻り、民にこの神の言葉を語ると、民はみな「わたしたちは、主が語られたことをすべて、行います」(出エジプト19・8)と言った。

そこでモーセは山に上り、神に民の言葉を伝えると、神はモーセに言った。「あなたは、民のところに戻り、今日と明日、彼らを潔め、衣服を洗わせなさい。三日目に、すべての民の前で、わたしはシナイ山にくだる。あなたは、わたしに近づこうとする民のために、山の周囲に境を設け、それにふれさせないように伝えなさい」(出エジプト19・10~13)。モーセは人々のところに戻り、そのとおりにした。

3日目の朝になると、雷鳴と稲妻と厚い雲が山に望み、角笛の大音響がいずこからともなく鳴り響いてきた。人々は震え上がった。神が火の中を山の上に下りて来たので、辺りには煙が立ち込めていた。山全体が煙に覆われ、激しく震えた。

角笛の音が、いよいよ鋭く鳴り響いたとき、神は再びモーセを山頂に呼び寄せた。山に上ると神はモーセに、雷鳴と稲妻の濃い雲の中から、イスラエルが守るべき十の戒律と律法を告げた。

イスラエルの民は、遠く離れて立ち、雷鳴がとどろき、稲妻が光り、角笛が鳴り響き、煙に包まれる神の山に、モーセの姿が消えていくのを見つめていた。

2 十戒(倫理十戒)

  1.  「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」
  2. 「あなたはいかなる像も造ってはならない。上は天にあり、下は地にあり、また地の下の水の中にある、いかなるものの形も造ってはならない。あなたはそれらに向かってひれ伏したり、それらに仕えたりしてはならない。」
  3. 「あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない」
  4. 「安息日を心に留め、これを聖別せよ」
  5. 「あなたの父母を敬え」
  6. 「殺してはならない」
  7. 「姦淫してはならない」
  8.  「盗んではならない」
  9. 「隣人に関して偽証してはならない」
  10. 「隣人のものを一切欲してはならない」 

これが「十戒」(出エジプト20・3~17)である。それから神は民の守るべき律法を伝える。

9章 神の律法 

1 イスラエルのための律法 

神はモーセに十戒を示したあと、民が守るべき諸々のことについてモーセに伝えた。

  • 奴隷制度は認められていたが、負債を返済する場合のみで、最長7年間とされた(出エジプト21・2~11)。
  • 人的損害に関しては適切な法的手段がとられるものとされ(出エジプト21・12~35)、財産は盗みや過失から保護され、損失への補償がなされなければならないとされた(出エジプト22・1~15)。
  • 弱い立場にあるものを虐待してはならず、寡婦や孤児、寄留者、貧しい者を傷つけた者は特別な罰が課せられる(出エジプト22・21~24)。
  • 訴訟は公平と誠実さをもってなされなければならず(出エジプト23・1~9)、奴隷と動物を含め、すべての者に安息日に休息する権利があるとされた。農地でさえ7年に一度休耕とされる(出エジプト23・10~13)。
  • 祭りは「除酵祭」(種なしパンの祭り、過越祭とも言われる)。「刈入れの祭」、「取り入れの祭り」の三つが行われるべきものとされた(出エジプト23・14~19)。すべての男子は年に3度、神の前に立たないといけないとされた。 

2 神の使いによる守り 

神はイスラエルの民が守るべき律法を伝えたあと、先導する使いを送ることをモーセに告げる。

民が神とその使いに従い、神のみを崇拝し続けるならば、アモリ人、ヘト人、ペリジ人、カナン人、エブス人の土地に彼らを導き入れて、これらの民を「絶やす」(出エジプト23・23)と言い、アブラハムに約束された土地をイスラエル人は所有すると告げた。

それからモーセにアロンやその息子ナタブ、アビフ、それにイスラエルの70人の長老たちと共に再び山に上って来るように言った。

3 モーセ、イスラエルの民に十戒と律法を伝え、同意を得る

モーセは山を下りて、神が語ったことをすべて人々に伝え、民はそれに同意し、「わたしたちは、主が語られた言葉をすべて行います」と言った(出エジプト24・3)。モーセは神の言葉をすべて書き記し、翌朝、山の麓に祭壇を築いた。

そこに民を来させ、契約締結の儀式を行った。モーセがその時に書き記した「契約の書」を民に朗読して聞かせた(出エジプト24・7)。民は再びその律法にも同意した。契約は常に血をもって締結される。モーセは犠牲とする雄牛の血を取り、「これは主がこれらの言葉に基づいてあなたたちと結ばれた契約の血である」 (出エジプト24・8)と言いながら、その血を民に降りかけた。

4 モーセ、再び山に登る

その後モーセは兄とその息子たち、70人の長老と再び山に上り、そこで「イスラエルの神」を見て(出エジプト24・10)、神が臨在する中で食事をし、契約をさらに確実なものとした。

神は十戒と律法を刻んだ石板を受け取らせるため、モーセをさらに上へと呼んだ。モーセが上がっていくと、主の栄光が雲となって山を覆った。

7日目に神は雲の中からモーセを呼ぶ。モーセは雲の中に入り、山に入って、40日40夜そこに留まった。 

☆新約における律法

律法は、わたしたちをキリストのもとへ導く養育係となったのです。わたしたちが信仰によって義とされるためです。しかし、信仰が現れたので、もはや、わたしたちはこのような養育係の下にはいません。   

ガラテア3・24~25

律法はキリストに導く養育係のようなものであり、キリストが現れたのでそのような養育係は必要ではない。

「キリストは律法の目標」(ローマ10・4)とも言われている。

互いに重荷を担いなさい。そのようにしてこそ、キリストの律法を全うすることになるのです。 

ガラテア6・2

キリストの律法は、神を愛すること、隣人を愛することである。

あなたがたに新しい掟を与える。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。 

ヨハネ13・34

互いに愛し合うこと、キリストのように愛すること、これが新しい掟である。

あなたがたは、わたしを愛しているならば、わたしの掟を守る。 

ヨハネ14・15

この掟はキリストを愛することで守ることができる。

10章 祭儀の掟

1 臨在の幕屋と祭司

モーセが神のもとに40日40夜留まっている間、神はモーセにイスラエルの礼拝、祭司の聖別、神との関係を保つために必要な献げ物に関する詳細な指示を与えた。 

  • 「臨在の幕屋」作成の指示。それは神の臨在のための移動式住処であり、それによって荒れ野を通過する旅においてイスラエル人と共に移動が可能となった。
  • 「臨在の幕屋」の使用を取り仕切る祭司の役割の指示。アロンを大祭司に、アロンの息子ナタブ、アビブ、エルアザル、イタマルを祭司に任命させる。
  • 祭司の着るべきものの詳細な指示。胸当て、エファド(ベストのような上着)、格子縞の長い服、ターバン、飾り帯を上質な金、青や紫、緋色の紡ぎ糸で職人が作成する。ズボンはシンプルな亜麻布の肌着にする。
  • アロンの祭服についての指示。それぞれにヤコブの12人の子の名が6人ずつ彫られた2つのラピス・ラズリがエフェドの肩につけられる。胸当てには12の部族に従い、12の宝石がつけられ、それがエフェドにつけられる。胸当てには神の意思を問うための籤(くじ)であるウリムとトンミムを入れる。エフェドと共に着るアロンの服は青一色とされ、その裾には鈴がつけられる。頭にはターバンを巻き、「主の聖なる者」(出エジプト28・36)と彫られた純金の胸当てをつける。
    ☆これらは彼自身が聖なる者ということではなく、神が彼とイスラエルに対して行ったことを象徴していた。 
  • 祭司聖別の儀式の指示。この儀式は7日間続く。アロンと息子たちはまず水で清められ、それから式服を着る。そして、雄牛と雄羊2頭が献げられる。

神は、シナイ山でモーセと語り終えた際に、十戒と律法を書き記した二枚の石板を与えた。モーセはそれを受け取ると山を下る。

2 金の雄牛

人々はシナイ山に40日も入ったままのモーセを死んでしまったと考えた。人々は神の言葉を忘れ、アロンに拝むべき新しい神が必要とせまる。そこでアロンは救い主を拝む金の雄牛象を造る。人々は「これこそが神である」と言い、祭壇を造り、献げ物をし、その前で食べ、飲み、立って踊った。

山頂にいた神は、麓のイスラエルの民が約束を忘れ、金の雄牛像を崇めているのを見て、怒りながらモーセに言った。「わたしはこの民を見てきたが、実にかたくなな民である。 わたしの怒りは彼らに対して燃え上がっている。わたしは彼らを滅ぼし尽くす」(出エジプト32・9、10)。

モーセは「 あなたが大いなる御力と強い御手をもってエジプトの国から導き出された民ではありませんか。どうしてエジプト人に、『あの神は、悪意をもって彼らを山で殺し、地上から滅ぼし尽くすために導き出した』と言わせてよいでしょうか。どうか、燃える怒りをやめ、御自分の民にくだす災いを思い直してください。どうか、あなたの僕であるアブラハム、イサク、イスラエルを思い起こしてください。あなたは彼らに自ら誓って、『わたしはあなたたちの子孫を天の星のように増やし、わたしが与えると約束したこの土地をことごとくあなたたちの子孫に授け、永久にそれを継がせる』と言われたではありませんか。」(出エジプト32・11~13)と必死に神をなだめた。

それを聞いた「主は御自身の民にくだす、と告げられた災いを思い直された」(出エジプト32・14)。 モーセは山を急いで下りた。     

モーセはイスラエルの民を見て、その手に持っていた神が記した掟の書かれた石板を叩きつけて割り、そして金の雄牛像を砕いた。

モーセは「主につく者はみな、ここに集まれ」(出エジプト32・26)と言った。神に従う者が彼のもとに集まると、剣を持たせ、集まらなかった者を殺させた。そしてその血の償いをもって神の赦しを乞うた。

神は「 直ちに、身に着けている飾りを取り去りなさい。そうすれば、わたしはあなたをどのようにするか考えよう」(出エジプト33・5)とモーセに告げる。モーセは民にこれを告げ、民はこれ以後、身に飾りをつけることをしなかった。


3 もう一つの十戒(祭儀十戒)

神はモーセに2枚の石板を造って、山に登るように命じる。モーセは命じられた通りにし、山に登る。モーセはもう一つの十戒を受ける(出エジプト34・10~26)。これは祭儀十戒と言われる。古い十戒は倫理的戒めであったが守ることは出来なかった。それゆえ、新しく与えられた戒めは、どのように礼拝を行なうべきかについてであった。正しく礼拝することで倫理が生まれるのである。

  1. あなたはほかの神を拝んではならない。主はその名を熱情といい、熱情の神である。
  2. あなたは鋳像の神々を造ってはならない。
  3. あなたは除酵祭を守りなさい。
  4. 初めに胎を開くものはすべて、わたしのものである。あなたの家畜である牛や羊の初子が雄であるならば、すべて別にしなければならない。
  5. あなたの初子のうち、男の子はすべて贖わねばならない。何も持たずに、わたしの前に出てはならない。 
  6. あなたは六日の間働き、七日目には仕事をやめねばならない。耕作の時にも、収穫の時にも、仕事をやめねばならない。
  7. あなたは、小麦の収穫の初穂の時に、七週祭を祝いなさい。年の終わりに、取り入れの祭りを祝いなさい。
  8. 年に三度、男子はすべて、主なるイスラエルの神、主の御前に出ねばならない。
  9. あなたは、わたしにささげるいけにえの血を、酵母を入れたパンと共にささげてはならない。過越祭のいけにえは翌朝まで残しておいてはならない。
  10. あなたは、土地の最上の初物をあなたの神、主の宮に携えて来なければならない。あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない。

モーセは、倫理的十戒、祭儀的十戒を石板に書き記した。モーセは、その他に献納や清めの儀その他の祭儀を司る仕様を告げられた。モーセはそこで40日40夜過ごし、シナイ山を下った。

再び契約の文書を記した石板を持ち、山から下りてきた。そのときモーセの顔は光輝いていた。彼は神に伝えられたことを伝える。イスラエル人たちは、今度こそ神の命令通りに従う。

11章 臨在の幕屋と契約の箱

1 臨在の幕屋の建造

モーセはシナイ山に40日間いる間に、臨在の幕屋と、その中で使う律法の石板を納めておく契約の箱などの調度品について、その造り方などの指示を神から受け取った。

モーセはシナイ山から戻るとイスラエルの人々に幕屋を造るように命じた。それは約束の地への旅路において民に同行する神と会うことのできる移動式の聖所であった。

モーセは「すべて進んで心からささげようとする者は、それを主への献納物として携えなさい」(出エジプト35・5)という神の言葉を伝えると、「金の雄牛」の過ち埋め合わせようとしていた民は大量の献げ物をもってきた。その量はあまりにも多く、持ち込むのをやめるように命じなければならないほどであった。

モーセは神が選ばれた2人を神の霊で満たし、幕屋を造る力と技術だけでなく、その技術を教える能力を与えた。

2 臨在の幕屋の造り方 

神の設計図に従って(出エジプト26)幕屋の建造が始まった。それは奥行き13.5メートル、間口4.5メートルのテントである。まず、青、紫、緋色の糸でテントの内側の亜麻布を造り、その幕を金の留め具で合わせる。これを山羊の毛で造られ、青銅の留め具で合わせられた2番目の層で覆う。さらに2層、保護のために雄羊の革と「じゅごん」の皮の幕がかけられる。枠組みはアカシアの木で銀の台座の上に組みまれる。最後に、入り口の垂れ幕がつけられ、幕屋の内側にもうひとつ、契約の箱を隠すために垂れ幕がつけられる。

3 幕屋の装飾

次に幕屋の内側に納めるものを造り始めた。まず、十戒が刻まれた2枚の石板を保管する契約の箱が組み立てられた。それは金で覆われたアカシアの木箱であり、運搬時に使う金で覆われた棒を挿入するための金の輪が両側についている。「贖いの座」(出エジプト37・6)と呼ばれるフタには金のケルビムが一対のっている。その他の調度品は、やはり運搬用の輪と棒がついた金で覆われたアカシア材の机や、3つの枝を両側に備えた幕屋を照らす燭台、やはり輪と棒がついた金や青銅で覆われたアカシア材の祭壇、浄めのための青銅の洗盤などがある。こうしたものすべてが亜麻布の幕で囲われた45メートルの大きな中庭の内側に置かれる。

4 会見の場所と礼拝の場所

エジプトから脱出後ほぼ1年後に人々は幕屋の建設を始めた。9カ月の重労働は終わりを迎え、イスラエルの民はついに神に会見する場所を得ることになった。彼らが旅をしている間はその先頭には契約の箱が運ばれていく。休む時にはその宿営の中心に、まさに神が彼らの中心にいることの象徴として、契約の箱が置かれたのである。

5 民のうちにある神

神は昼も夜も見ることのできる雲の柱として幕屋の上に現れた。モーセは幕屋における神の臨在を畏れ、その中に入らず、中から発せられる神の命令を聞いた(レビ1・1)。

雲の柱は神が真にイスラエルのうちに住まうことのしるしであり、その臨在を強く保障していた。

雲は人々をエジプトから導き出し、約束の地に導くために再び現れた。使徒ヨハネはキリストが「われらの間に宿られた」(ヨハネ1・14)、ギリシャ語では「われわれのうちの幕屋に住まわれた」と訳せる語が用いられ、この出来事を思い出させている。

12章 荒れ野での放浪 

 

1 シナイ山を離れ、約束の地へ向かう 

モーセがシナイ山から約束の地へ向けて旅立つ前に、どれだけの者が軍に従属できるかを確認したところ、20歳以上の男子の数は60万3千5百5十人とわかった。モーセはこの全軍を12の民族を印す旗の下に分けた。

その一か月後(エジプトを出て14か月後、シナイ山には11カ月滞在)、雲が動き、イスラエルの民はその雲に従い約束の地に向けて前進はじめた。

2 神の栄光の顕現

民は宿営する際には幕屋を張り、契約の箱を置き、その周りには東西南北3部族ずつ配置された。幕屋は雲で覆われ、神の栄光で満ちていた。雲が幕屋から離れて昇るごとに、民は出発した。この旅路中ずっとそうした。雲が昇らないときは出発しなかった(出エジプト40)。

民の軍は、神が雲となって聖なる幕屋を離れ空に渡ると、東西南北の順に進軍し、雲が止まるとそこで野営した。

3 民の不満

イスラエルの民は砂漠に入ると、すぐに生活の厳しさに文句を言うようになる。モーセがもはや指導者の重責を負うことができないと神に言うと、その責任を分かち合う70人の長老たちが任命されることになった。その後、強い風によって吹き寄せられたうずらが食べ物となった。しかし民はその新鮮な肉があってもまだ不満を言い続けた。

ミリアムとアロンはモーセのことを「神はモーセを通してのみ話をするのか」と言って、モーセの振る舞いを非難した。神はミリアムとアロンを叱責し、ミリアムは7日の間、重い皮膚病にかかった。

数年後、民の相変わらずの忍耐のなさゆえに宿営に毒蛇が送られ、多くの人が死んだ。モーセは「炎の蛇を造り、旗竿の先に掲げよ。蛇にかまれた者がそれを見上げれば、命を得る」 (民数記21・8)という神の言葉に従い、青銅の蛇を造った。 

3 カナン人の偵察 

人々がカデシュ・バルネアに到着すると、神は12人の偵察隊を送るように命じた。40日後、偵察隊は土地の豊かさを示すいちじくの実やざくろ、巨大なぶどうの房を持ち帰った。しかし、報告によれば、カナン人の人々は強大で、町は大きく、住民は「巨人」(民数記13・32)だった。人々は恐れをなした。 

4 世代全体への裁き 

人々は再び、エジプトや砂漠で死んでいればよかったと言うようになり、エジプトに戻るとさえ言い出す。

モーセとアロンは民の前で祈り、偵察をしたカレブとヨシュアが信仰の回復を試みる。神はイスラエルの人々に憤り、彼らを根絶し、その後はモーセのみを通して業を行うと脅した。モーセは祈りつつ、もし民をカナンの地に導かなければエジプト人はそれをどう受けとめるかと神の名声を心配し、神の慈しみと寛大さに訴えて民との間を執り成した。

神は民を赦すが、カレブとヨシュアを除いて、その時20歳以上の者は誰もカナンの地には入れないことを告げる。イスラエルの人々は、40年間、その世代全体が死に絶えるまで荒れ野で過ごし、その後の世代しか約束の地に入れないことになった。

偵察隊のうち悪い情報を流した者は疾病で死ぬ。その後、人々は急いでカナンに侵入しようとしたが、先住民によって打ち負かされる。 

5 荒れ野での歳月 

イスラエルの人々がその後、38年カデシュ・バルネア近くの荒れ地で過ごした。神はようやく彼らをカナンの地へと進ませる。

民は死海の南に住むエドムには土地を通過することを拒否され、そこを迂回して死海東側のモアブに到達し、アモリ人の王シホンを討ち、北はバシャンの王オグを滅ぼした。

その後、モアブの平野に戻ったイスラエルの民はエリコからヨルダン川を渡ることになる。そこではモアブ王バラクがイスラエルを呪うために預言者バラムを雇っていた。神は怒り、バラムに使いを送る。最初、その使いが見えたのはバラムのろばだけだったが、バラムはすぐに神がイスラエルと共にいて、呪うよりもむしろ祝福していることに気づく(民数記22~24)。

ルベン族、ガド族、マナセ族の半分は牧羊に適したヨルダン川東岸に定住することを望んだ。モーセは同意したが、まずは全民族で土地を得なければならないと言った。荒れ野の旅は終わり、イスラエルの民はいよいよ約束の地を得る。 

6 モーセの死 

モーセはカナンに入るまさに直前に、神の律法を新しい世代に繰り返した(申命記)。その後、ヨシュアを後継者に任命し、ネボ山に上って約束の地を眺めた。神はモーセに語りかけ、子孫に与える土地を自身の目で見せるためにネボ山に上らせたのだと言った。しかし、モーセは約束の地に入ることはなかった。彼は120歳で死に、伝承によれば、神によってネボ山に葬られたという。 

☆ モーセ小史

  • 前1526年頃 モーセ誕生。
  • 前1486年頃 エジプト人を殺し、ミディアンの地に逃亡。
  • 前1446年頃 燃える柴のところで神と出会う。イスラエル人を解放するためにファラオのもとに遣わされる。
  • 前1446年頃 エジプトからイスラエルを導き、紅海を渡る。
  • 前1444年頃 シナイ山で神の律法を受け取る。
  • 前1406年頃 イスラエル人にカナンに入る準備をさせる。契約を更新し、ヨシュアを後継者として任命する。
  • 前1406年頃 ネボ山の頂上で死す。