8書 6章 聖母被昇天

天の摂理により、聖母のご死去3日前に、聖母のもとに、使徒たちや弟子たちは集まりました。聖母は、集まった全員に、深い謙遜、畏敬をもって接し、一人一人の祝福を願われました。使徒たち、弟子たちは、聖母を神の御母、彼らの女王と呼んで挨拶しました。この尊敬と同じくらいの悲しみがありました。聖母の臨終に立ち会うために集まったからです。聖ヨハネは、聖母からのご指示に従い、聖小ヤコブとともに人々の歓迎と宿泊のもてなしを行いました。天に昇られる日、聖母は皆に敬意を表し、言います。「私の最も親愛なる子供たちよ、あなた方の召し使いである私に話させてください」。聖ペトロのまえにひざまずき、言います。「私の主人、全宇宙の司牧者である聖なる教会の頭が、私に祝福をくださるようにお願いします。私は生涯にわずかしか奉仕しませんでしたので、この婢(はしため)をお許しください。聖ヨハネが私の着物や二着の上着を、私の世話した二人の婢に与える許可をください」。次に聖ヨハネのもとに行き、ひざまずき、言います。「私の息子、私の主人よ、主が十字架からあなたを私の息子として、私をあなたの母として任命されたのに、私は母として義務を追行できなかったことを許してください。あなたが息子として示した御親切を心から感謝します」。一人一人の使徒たちと、何人かの弟子たちにお別れの挨拶をしたあと、立ち上がられ、全員に話されました。「最も親愛なる子供たちである御主人、私は絶えずあなたたちのことを思い、私の心に書き記しています。あなたたちは、御子の選ばれた友であり、あなたたちのなかに御子を見ます。御子が私にくださった優しい愛情と愛徳で、あなたたちを愛しています。御子の永遠の御意志に従い、永遠の住まいに行きます。その住まいで、神の光により、あなたたちの母として見守りましょう。あなたたちに、私の母なる教会、いと高きかたの御名の賛美、福音宣教、御子のみ言葉の名誉と崇拝、御子のご受難とご死去の記憶、御子の教義の実施をお任せします。私の子どもたち、あなたたちの主がいつも教えられたとおり、教会を愛し、愛徳によってお互いを愛し合いなさい。聖なる教皇ペトロよ、あなたに私の息子ヨハネと他のすべての人々をよろしくお願いします」。聖母の御言葉は神の火の矢のように全員の心を貫きました。聖母が話し終えると、全員が泣き、聖母もお泣きになりました。しばらくして聖母はもう一度話され、全員に黙とうするように話します。全員の黙とう中、輝く王座におられる御子が、諸聖人や無数の天使たちに付き添われて御母の前に現れます。全天使たちはソロモンの雅歌や新しい歌を合唱しました。救い主キリストの御出現を見たのは、聖ペトロと聖ヨハネだけでした。他の人々は、御出現を心につよく感じました。天使たちの歌声は全員が聞くことができました。天使たちが合唱をはじめたとき、聖母は長椅子の上に横になられ、上着は御体のそばにたたんでおかれ、両手をお組になり、御目は御子を見つめられ、神の愛の火に全身が燃えました。天使たちが「立て、急げ、私の愛するもの、わたしの鳩、美しいものよ、来なさい。冬はさりました」(雅歌二)など歌ったとき、聖母は十字架上の御子の御言葉、「ああ主よ、あなたの手に私の霊をゆだねます」を宣言されたあと、御目を閉じられ、息が絶えられました。聖母のいのちを奪った病気は愛です。他の弱さとか、偶発的な干渉は何もありません。神に対する燃える愛をその時まで制御していた助力を神がお止めになった瞬間、聖母は息をお引き取りなりました。聖母の愛の火は、心臓の生命の液を蒸発しつくし、この世におけるご生命に終止符をうちました。諸天使、諸聖人の行列が女王に従い、最高天に昇ります。聖母の御体は素晴らしい光で輝き続け、今まで聞いたこともない芳香を発し、そばにいる人たち全員の内部、外部を満たします。聖母の守護にあたっていた千位の天使たちは留まります。使徒たちと弟子たちは、見聞きした不思議で涙と喜びに我を忘れ、しばらくの間、感嘆し続けます。

人々は埋葬の準備に入ります。み旨どおり、御母の御体を着衣のまま、うやうやしく上着の上下両端のところで持ち上げ、棺台におのせします。棺台上の御体は芳香を発し、童貞の御顔や御手は周囲の人々によく見え、生前親しく御顔や御手を見た人々のこの上もない慰めとなりました。そして使徒たちは棺台を担ぎ、ヨザファトの谷間で行列しながらお運びしました。ヨザファトの谷の聖なる墓に、聖ペトロと聖ヨハネは天の宝である御体を安置し、リンネルの布をかけました。そして墓の前に、大きな岩を置き、入り口を封じました。千位の天使たちは御体を警護し、音楽を奏でつづけました。人々は家に帰り、使徒たちは泣き崩れたあと、高間に戻りました。使徒たちはお墓を天の音楽が聞こえる限り守ることにしましたが、いつまで音楽が続くかわかりませんでした。何人かはすぐにお墓に引き返し、他の全員は次の3日間何回もお墓をお参りしました。聖ペトロと聖ヨハネは特に熱心でした。主イエスが、御母の霊魂を御自身の右の玉座にお連れしたとき、主は御父に言います。「永遠の御父よ、私の最愛の御母、あなたの愛しい娘、聖霊の憧れた清い配偶者が、この冠と光栄を今ここで、お受けします。御母の御功徳のため、私たちはこの報酬を準備しました。御母は、針のなかのバラとして生まれ、汚されず、清く、美しく、私たちに迎え入れられ、他の人間の到達できない玉座につくことに値します。御母こそ、私たちの選んだ唯一のかた、何物よりも卓越し、私たちの恩寵や完全と合わさります。私たちの計り知れない神性と賜物を御母に預けました。御母は最も忠実にこの宝を保管し、さらに増やします。御母は私たちの意志から決して離れませんし、いつも私たちの恩寵を保ちます。私の御父よ、私たちの慈悲と正義の取り決めは正しく、私たちの友人たちの奉仕に対し、たくさんの恵みを与えてきました。私の御母は、御生涯において、被造物として可能な限り、私と似た者となられたので、私の似たものとして光栄と玉座を頂くことになるのは正しいことです」。御父と聖霊は賛成されます。御母は、御子の右にあげられ、聖三位の玉座に加わります。聖人も天使もセフィラムでさえも、この高い特権を得られません。御母は聖三位一体の神と玉座を共有され、皇后としての地位につきます。御戴冠後三日目、時が至ると、主は、御母をともなって、大軍の天使たち、聖人たちを従え、ヨザファトの墓の前にきます。そしていいます。「私の御母が罪の汚れなく御宿りなったのは、御母の童貞の御体から私が体をいただき、人間となり、この世を罪から救うためでした。私の体は御母の体です。私の世を救う業に、御母は協力しました。私が死者より復活したように、同じ時刻に御母に復活させます。あらゆることにおいて御母に、私に似た者となられるように望みます」。御母は、主の御命令により、女王の至純なる霊魂は童貞の御体に入り、起き上がり、墓から出てこられます。そして墓から最も厳かな行列が、天の音楽とともに空中をとおり最高天に向かいます。これは主の御復活と同時刻、真夜中を過ぎたばかりに起こり、墓番をしていた幾人かの使徒たちが目撃しました。天国で、主キリストの右に座った聖母は、種々の宝石でできた着物を着ておられ、大変美しく、天の宮殿の称賛のまとになりました。全員が聖母を見つめ、喜び、賛歌を歌いました。「いでよ、シオンのおとめたちよ、明けの明星が讃え、いと高きお方の子息らの歌うあなたたちの女王に会いなさい。よい香りのする柱のように、荒れ野から上って来るおとめは誰か。オーロラのように昇り、月よりも美しく、太陽よりも正義であり、多くの軍隊よりも強いお方は誰です?砂漠からこられたお方は誰か?」(雅歌三・六-九、八・五)。「神があらゆる被造物以上にお喜びになり、天のすべての上にあげられたお方とは一体どなたでしょうか?」。永遠の御父は言います。「高く昇れ、私の娘、私の鳩よ」。人となられた御言葉は話します。「私の御母、あなたから私は体をうけ、あなたは、私に完全に似たものとなり、私の仕事を果たしました。私の手から、あなたの功徳による報いを、今、受けてください」。聖霊は言います。「私の最も愛する清い配偶者、あなたの最も忠実な愛に一致する永遠の喜びのなかにお入りください。あなたの愛を心配しないで、喜んでください。苦しみの冬は過ぎ、あなたは私たちの永遠の抱擁にお着きになりました」。聖母は神性の果てしない大海と深みのなかに入ったかのようです。