第1書 第五章 人類の繁殖、救世主の待望。ヨキアムと聖アンナ

救い主である神が人性をとって御来臨になる最終段階にきます。その時は、古来の蛇が毒気により全地を汚染し、理性の光が見えなくなってしまった人間たちを完全にコントロールしたときです(ローマ一・二〇)。人々は神の律法が見えなくなり、真の神を求めず、多くの偽りの律法をでっち上げ、自分の好みに従って神を作り上げていました。人々は真の神を忘れ、悪意と無知が広がり、愚か者ばかりの世となりました(コヘレト九・十五)。神は恩寵の約束を実行することに決め、我らの主キリスト、正義の太陽があらわれる前に、ヨアキムとアンナを地球に送りました。ヨアキムはガリラヤの町ナザレトの出身で、正義と聖性の人であり、特別な恩寵に照らされ、聖書や預言に通じていました。神の御約束の成就を心から願っていました。一方アンナはベトレヘム出身の、純潔で謙遜な美しい乙女でした。幼少のときから諸徳をつみ、黙想に終始し、聖書を十分に知り、救世主の御来臨を絶えず祈願していました。アンナは旧約の聖人のなかで抜きん出ていました。そして古来の律法を守り助けてくれる夫を探して下さるよう、アンナは神に懇願しました。ヨキアムも同様な祈りを同時にしました。聖三位一体なる神は両者の祈りを聞き届け、二人が人となられる神の御母の両親となることを定めました。主の命令を受けた大天使ガブリエルは、アンナの前に姿をあらわしました。光り輝く天使をみてアンナは驚き、喜び、ひれ伏しました。聖ガブリエルは告げます。「至聖なる神が召し使いになるあなたを祝福します。あなたの懇願を聞き届け、救世主の御来臨を待ち望む叫びに耳を傾けてくださいます。あなたがヨアキムと結婚することを望んでおられます。二人は心を合わせ、主に仕え、律法の成就を祈願し、正義の道を歩み、天国に心を開き、救世主の御来臨を待ち望みなさい。」と。言い終えると聖ガブリエルは見えなくなりました。ヨキアムに対して大天使は夢のなかで告げました。「ヨキアムよ、あなたが、いと高き神の御手により祝福されますように。神は、あなたがアンナと結婚することをお望みになっています。彼女の面倒をみて、いと高き神に誓い彼女を敬いなさい。神に感謝しなさい。」と告げます。すぐにヨキアムはアンナに求婚し結婚しましたが、二人とも長い間、天使のお告げを隠していました。ナザレトで二人は、神の教えに従った生活をおくります。二人の収入は三等分され、三分の一ずつ、エルサレムの神殿への寄付、貧者への分配と二人の生活費となりました。二人の寛大な慈善の行いをお喜びになった神は、二人の生計を助けました。二人は平和と一致のうちに暮らし、喧嘩も不平もありませんでした。同じことを願わない日はありませんでした(マタイ二十七・二十)。子供が生まれずに二十年が過ぎました。この期間、近所の人たちは子供の授からないこの夫婦を非難し、軽蔑しました。救世主の恵みを受けるのに値しないものと決めつけたのです。神は、この夫婦が忍従し、将来の光栄ある子供の出産を準備するように望まれました。この夫婦は、子供が恵まれるのなら、エルサレムの神殿に奉献するという請願をたてます。その請願を一年間続けたあと、ヨアキムは町の人々と一緒に神殿にいき、救世主の御来臨と赤ちゃんの出産のために祈りと供え物を捧げることになりました。しかし彼は、神殿で下位聖職者にさんざん叱られました。「ヨアキム、お前は子無しだから、神に喜ばれないのに、なぜ献げ物をするのか?団体から離れ、立ち去りなさい。神に迷惑をかけてはいけません。どうせ、お前の供え物は、はねつけられるに決まっている」と。この聖者は、恥ずかしさと混乱で頭がいっぱいになり、謙遜に主に祈ります。「至聖なる主よ、ご命令どおりに神殿にきました。あなたの理解者は私を嫌っています。私が罪人だからです。私は、あなたの御意志にしたがうので、どうか見捨てないでください」(詩編二百七十五・十)。そして自分の所有している倉庫にひきこもり、何日間か祈りに明け暮れました。「いと高き永遠なる神よ、人類の生存と救済はあなた次第です。私の霊魂の苦悩を見てください。私の祈りと、あなたのはしためアンナの祈りを聞いてください。私たちの希望は、あなたはよくご存じです(詩編三十八・十)。私は無価値なものです。しかし私の謙遜な妻を嫌わないでください。アブラハム、イサクとヤコブ、私たちの最初の祖先たちの主なる神よ、子無しの私が、非難され捨てられるものたちの仲間になることがないようにしてください。ああ、主よ、私の祖先であるあなたの召使や預言者の犠牲や献げ物を思い出してください。信頼して祈るように、あなたはお命じになりました。私の願いは、あなたのみ旨に従うことです。私の罪があなたの慈悲を遠ざけるならば、私の罪を赦してください。私は貧しく、取るに足らないものでも、あなたは最も卑しいものにでもご慈悲を与えます。あなたは何世代にわたって恩恵を与えてくれました。もし、み旨にかなうなら、私に子供を恵んでください。私は子供をあなたに捧げます。子供を永遠に神殿に奉献します。私はあなたに目を向け、この世の過ぎ行くことから目を背けてきました。あなたの玉座から、このきたない塵に目を注ぎ、拾いあげてください。この塵があなたを讃え、敬い、あなたのみ旨を行うことができますように」。ヨアキムが人々から離れて祈っている時、聖なる天使がアンナに現れ、子供を授かりたいという彼女の熱心な望みを全能者が聞いていることを告げます。アンナは謙遜と信頼のうちに祈ります。「いと高き神、私の主、全ての創り主、私はあなたを無限、聖、永遠なる神として崇めます。私は塵にすぎませんが、あなたの前にひれ伏し、申し上げます(エステル十三・九)。全てを創る主なる神よ、私の胎内に子供を授けてください。そして子供が神殿であなたに仕えるために捧げることができますように(創世十八・二十七)。ああ、主よ、あなたの召使のサムエルの母は産まずの女でしたが、あなたのご慈悲により、子供を授かったことを思いだしてください。同じご慈悲をお願いします。私の祖先の犠牲、捧げものと奉仕、そして恩恵の報酬を思いだしてください。私の捧げものは、私の霊魂、私の能力と私の全存在です。私に子供を授けて下さいますならば、私はたった今、子供を聖別し、神殿の奉仕に捧げます。イスラエルの主なる神よ、このいやしい被造物を眺め、あなたの召使ヨアキムを慰めてください。そして全てにおいてあなたのみ旨が行われますように」。聖三位なる神は天使たちに仰せられました。「み言葉は人となり、全ての人に救いをもたらすであろう。このことは、われらの召し使いなる預言者たちに既に伝えた通りである。生きる者たちの罪と悪意は処罰されるべきであるが、人間に対する愛は消えることはない。私たちの姿に似せて創造した人間を、我らの相続者、参加者にさせるつもりである(一ペトロ三・二十二)。我らを誉め、愛する大勢のものたちを認める。全ての人の上に、選ばれるべき「女」がいる。み言葉を胎内に抱き、体を与えるからである。この事業の初めより、神のこの宝はこの世に示された。時機到来にあたって受け入れられるべきである。ヨアキムとアンナは我らの恩寵を得た。二人は試練において、単純さと正しさにおいて、常に忠実である。このことをガブリエルを通して両人と世の中に知らせよう」と。主はガブリエルに仰せになりました。『ヨアキムとアンナにはっきり伝えなさい。「二人の願いは受け入れられた。二人は恩恵の子供を授かるであろう。子供をマリアと名付けよ」』と。命令を受けたガブリエルは最高点の頂から降り、ヨアヒムの前に立ち、祈っている聖人に声をかけました。「天の玉座におられる全能者は、あなたの希望を知り、汝の祈りと希望を知り、あなたの嘆きと祈りに耳を傾けられ、あなたを地上の幸せ者にして下さった。あなたの妻アンナは身ごもり、娘を生むだろう。娘は女のなかで一番祝福をうけた方です(ルカ一・四十二)。全ての国民に知れ渡るだろう。永遠の神であり、自ら存在し、万物を創造された御方は、最も正しく強力であられる。あなたの仕事ぶりと貧者への施しを喜ばれ、汝の家庭を娘の出産によりお祝いになる。名前をマリアとせよ。あなたが約束したように、幼少の時から神殿のなかで神に捧げなさい。神は産まずの女のアンナに子宝を授けるという奇跡を行われる。神に感謝するために神殿に行きなさい。黄金の門の所で感謝の祈りをしに来る汝の妻アンナに会うであろう。この子の受胎は天と地を喜ばすのである」と。一方、三回も祝福されたアンナは、み言葉の受肉の黙想に没頭していました。最も醜く自己を卑下し、生き生きとした信仰をもち、人類の救世主の御来臨を次のようにお願いしました。「いと高き王にて唯一の創造主よ、私は最も邪悪で嫌悪すべき被造物ですが、私に与えられた命にかけて、我らの救いのときが早く来るように御身に切望します。人類の改革者にして救世主の御目にかかれますように!主よ、御身の御独り子を我らに遣わすとあなたの選ばれた民におっしゃいました。たった今、おいでになりますように!御独り子が天より降り、この地上に母を持つことは可能でしょうか?どのような御方が御母になるのでしょうか?御母の召し使いになるのに値する人は誰ですか?御母を見る目と、聞く耳はどんなに祝福されていることか!」。このとき、ガブリエルがあらわれ、アンナに言いました。「あなたとヨアヒムの謙遜、信仰と貧者への施しは、いと高き方は大変お喜びになっています。神からの伝令を伝えます。神は、あなたが御独り子を生むお方の母になることを望まれます。あなたは娘を生むでしょう。その子をマリアと名付けなさい。マリアは、聖霊に満ち満ちて、女のなかで最も祝福されかたです。また人を元気にするため、天の露を降らせる雲のようなお方です(三列王十八・四十四)。祖先の預言は成就し、このお方はアダムの子孫のための生命の門、救いであります。私はヨアキムに娘の誕生が近づいたことを知らせましたが、娘が救世主の母になることを言っていません。この秘密は守りなさい。あなたは神殿に行き、あなたの胎が人となられる神を生むお方を生むことに、いと高き方に感謝しなさい。黄金の門でヨアキムに会い、知らせを伝えなさい。」と。すぐさま、立ちあがり、エルサレムの神殿に向かいました。そこでヨアキムに会い、共に全能者に感謝し、特別な捧げものと(動物の)生贄を捧げました。そして聖霊の恩寵に満たされ帰りました。聖ガブリエルの伝令をお互い打ち明けました。同時にお互いの結婚を承諾せよという最初のみ旨のメッセージも初めて分かちあいました。結婚のメッセージは二十年お互い隠していたのです。改めて娘を神殿に奉献することを誓い、毎年毎日を神の賛美、感謝と多くの施しをすることにしました。この誓いは二人の死まで実行されました。賢明なアンナは娘が救世主の母になることを夫にも他の誰にも話しませんでした。ヨアキムが死の直前に、全能者からこの秘密を教えて頂いたことは後で述べましょう。