第8書 1章 ヘロデの迫害。神はマリアがエフェソに滞在することを知らそうとされる。

西暦四十年一月、聖ヨハネは聖母にエフェソへの出発の準備ができたことを告げます。聖母は直ちに跪き、高間とエルサレムを去る許可を主に願います。聖母は、私たちの救いのための聖所を訪れる許可を聖ヨハネに願います。主がおられ、御血を流された場所の数々に二人で行き、主を崇拝します。出発にあたり、聖母は聖ヨハネに祝福を願います。このようにへりくだることは続けられます。主の愛すべき弟子であり主の代理者である聖ヨハネに対し、従順と謙遜を示すことは聖母にとって当然のことのようです。船旅を終え、エフェソに上陸されたとき、病人や悪魔憑きのものたちを癒しました。エフェソには、エルサレムからきたキリスト教信者が少数いました。聖母の到着を聞いて集まってきて、自分たちの住居や持ち物を提供しました。聖母は、隠居している貧しい女性が二、三人住んでいる家を選びました。とても奥まった部屋が聖母の部屋になり、聖ヨハネも一室借りることになります。聖母は家の所有者たちに感謝し、自分の部屋に行き、ひれ伏し、いつものように祈ります。「全能の神なる主よ、無限のあなたは天地をも満たしておあられます(エレミヤ二十三・二十四)。あなたの卑しい召し使いである私は、あなたの聖なるみ旨をいつどこでも、どのような場合でも実行したいと思います。あなたは私の善である神であり、私の存在と生命であられ、あなたの思し召しのほうに、私の考え、言葉、行いの全てが向かいます」。聖母は教会のために祈り、全信者を助けるための御計画を作ります。聖母は天使たちを呼び、迫害に苦しむ使徒たちや弟子たちに天使を送られました。そのとき、聖パウロはユダヤ人たちから攻撃される前に、かごに乗り、ダマスコの城壁に沿って城壁の外に降ろされました。エルサレムへ向かう途中でも聖パウロは天使たちに守護されました。聖パウロに対する地獄の怒り方は、他の使徒たちに対するよりもけた違いに醜かったからです。エルサレムで、会えたのは聖ペトロ、聖ヤコブや他の弟子たちです。やっとのことで受け入れら、エルサレムで説教を始めます。聖パウロはエルサレム市中全体に知れ渡ります。悪魔たちはヘロデやユダヤ人たちを扇動し、聖パウロを敵と考えさせます。聖母はエフェソに引きこもられながら、神の御知恵のおかげで、また天使たちの勧告により、聖パウロの身の上に起こっていることがわかりました。エルサレムから離れているため、直接に使徒たちを助けに行けないことを残念に思い、祈りと願いをもっと増やし、絶え間なく涙を流し、嘆息をつき、天使たちに使徒たちを援助するようにお願いします。主は聖母の祈祷中に御出現になり、聖母の祈願を受け入れ、聖パウロの命を守ることを確言なさいました。主は、神殿で祈っている聖パウロに、幻視のなかで直ちにエルサレムから逃げるように命令されました。エルサレムに着いて十五日のうちにエルサレムをでることになります。幻視のことを、聖パウロは聖ペトロに告げたあと、承諾をうけ、カイザリアとタルソに密かに行きます。聖パウロの脱出のあと、聖母は聖ヤコブの命乞いをします。聖ヤコブは、聖母がエフェソにいることを天使たちから教えてもらい、今エフェソにいます。聖ヤコブは、聖母の足元にひれ伏し、涙を流し、主の大いなる御恵みを感謝します。そして聖ヨハネと三人で高潔な会話をします。その後、聖ヤコブは、エルサレムで活動し、救世の神秘について昔からの書物から引用して素晴らしい説明をして聴衆を感動させ、悔い改めの涙にむせたとき、祭司たちは怒りを爆発させ、大騒ぎをおこします。すぐに聖ヤコブは、捕まり、聖ヤコブが騒ぎをおこした張本人であり、ローマ皇帝に新宗教を勝手に作ったと宣言します。聖ヤコブは、主のように、縛られて、苦しめられ、牢に入れられます。聖母の予告どおり、殉教によって、現世から永遠の生命に移ることを予見し、嬉しくてしかたありません。聖母が自分の死のときに付き添ってくださる約束を思い出し、聖母に心から呼びかけます。聖母は、聖ヤコブの身の上に起こっていることを全て知っておられ、お祈りしておられると、天から天の大群が降りてきて、一部の天使たちは刑場に向かう聖ヤコブのもとに集まり、残りは聖母のところに来るのが聖母には見えます。一位の天使が聖母に挨拶します。「天の元后、私たちの貴婦人よ、いと高き主なる神が、あなたがエルサレムに駆けつけ、聖ヤコブを勇気づけ、死に直面するのを助け、聖なる希望を叶えさせるように願います」。聖母は感謝し、いと高きかたのご慈悲を信頼し、御手に命を任せるものを保護してくださることを賛美します。聖ヤコブが刑場に向かう途中、集まってきた病人や悪魔憑きを治します。その間、天使たちは、最も輝く玉座に聖母をお乗せし、聖ヤコブの刑場にお連れします。聖ヤコブは跪き、いと高きお方に自分の命を捧げ、目を天に上げると心のなかで祈り、訴えていた聖母がそばの空中におられるのが見えます。歓喜に満ち、神の御母である全被造物の女主人に対する 崇敬宣言を言おうとしたところ、大天使に控えるように言われます。「ヤコブ、私たちの創造主の僕よ、この尊い気持ちを心のなかに抑え、私たちの女王の御隣在と御助けをユダヤ人たちに知らせないでください。ユダヤ人たちは女王を知る価値も能力もなく、女王を尊敬する代わりに憎しみの心を固めるだけでしょう」。聖ヤコブは天の女王に心で話しかけます。「私の主イエス・キリストの御母、私の女主人である保護者よ、あなたは困るものを慰め、苦しむ人の避難所となり、今、私に祝福を与えてくださいます。あなたの御子である救世主に、私の命を捧げてください。主の御名と光栄のために、はん祭の犠牲になりたいのです。あなたの御手が私の生け贄の祭壇となり、私のために十字架上でご死去になった主への捧げものとしてふさわしくなりますように。あなたの御手に、そして御手を通して創造主の御手に私の魂をお任せします」。言い終わり、聖母を見つめながら斬首されました。聖母は処刑された使徒の霊魂を受け取り、即座に御自分の隣に置かれ、最高点に昇り、御子に捧げます。いと高き神は聖ヤコブの霊魂を受け取り、主の民の王たちの仲間入りをさせます。聖母は全能者の玉座の御前にひれ伏し、使徒たちの中で最初の殉教者のため、賛美と感謝の歌を歌います。聖三位一体の神は、聖母と教会を祝福します。天使たちは聖母をエフェソの祈祷室にお送りします。聖ヤコブの殉教は、ユダヤ人たちの最も不敬な残虐行為をますます盛んにするきっかけとなりました。ルシフェルとその手下たちは、ユダヤじんたちに聖ペトロを捕らえるようにそそのかします。聖ペトロはたくさんの鎖に撒かれ、地下牢に入れられ、過ぎ越し祭のあとに処刑されることを待ちます。エルサレムに起きていることをよくご存じの聖母は、聖ペトロの釈放を主にお願いされます。熱心にお願いし、嘆息をつき、ひれ伏し、血の汗をお流しになります。そこに、主が現れ、言います。「私の御母、あなたの悲しみをやわらげてください。御望みになることは何でもおっしゃってください。私は何でも叶えましょう。御望みの通り、あなたがなさいますように。私があなたに差しあげた力をお使いください。私の教会のために必要なことは何でもおっしゃってください。悪魔たちの怒りがすべてあなたに向けられることは確かです」。聖母は感謝して言います。「いと高き主よ、私の霊魂の希望と生命よ、あなたの御血と御命により買い戻された霊魂のため、働くように、あなたの召し使いの心と魂は準備してあります。私は役立たずの塵にすぎませんが、あなたは無限の力と知恵を備えておられます。あなたの助けにより、私は地獄の龍を怖れません。あなたは教会のために私が行うことをお望みになりますので、私は今、教会を悩ますルシフェルと悪の執行者たちが地獄に行くこと、あなたが許可されるまで地上に帰ってこないことを命令します」。エフェソにおられる世界の女王の命令は、大変協力でしたから、この瞬間、エルサレムにいる悪魔全員は地獄に落ちました。ルシフェルと仲間たちは、この罰が、聖母により命じられていることがわかりましたが、混乱し、落胆し、次の機会を狙います。聖母は主にお願いします。「私の御子なる主よ、もし思し召しなら、あなたの天使たちのうちの一位を聖ペトロの牢屋に遣わし、聖ペトロを釈放してください」。命令を受けた天使は急いで牢に行くと、入り口には大勢の兵士たちがいて、牢のなかでは聖ペトロが二本の鎖に撒かれ、二人の兵士に見張られています。翌朝は処刑と決まっているその前夜でした。聖ペトロは何の心配もなく寝ています。天使は彼を揺さぶり、目をさまませて話しかけます。「早く起きなさい、帯をしめ、靴をはき、外套をかけ、私の後ろについてきなさい」。聖ペトロは鎖が外されていることに気づき、何が何だかわからないまま天使について行きます。天使は町の通りを案内してから、全能者が聖母のお取り次ぎに答えてあなたを牢から救い出したこと主に感謝します。そして聖小ヤコブや信者たちのところに行き、自分の救助について報告し、夜中にエルサレムから抜け出します。聖母は祈りと涙にくれ、守護の天使たちのなかで最高の天使に言います。「いと高きお方に仕えるものよ、いと高きお方の玉座のところに昇り、私の困難を伝えてください。私が主の忠実な僕の代わりに苦しむ許可を得てください。ヘロデが教会を破壊するたくらみを実行することをお許しにならないよう、私の名により主に頼んでください。」すぐさま天使は天に昇り、聖母の願いを伝えます。聖母が祈り続けられているとき、天使が戻って来て言います。「天の女王様、万軍の主は、あなたが教会の御母、女主人、そして女監督であること、そして御身は地上において主の御力を所有することを宣言され、天の女王として御名がヘロデに刑の宣告を下すことをお望みになります。最も謙遜な御母は、この報告に戸惑い、愛徳により質問されます。「主の似姿に造られた人間に対し、私は死刑を宣告すべきでしょうか?私としましては可能な限り、人々の救いを願い、罰を急いでお願いしたことはありません。天使よ、主の元に戻り、私の法廷も権力も低級で、主に依存しますから、私に相談せず、死刑宣告できません。もし、ヘロデを救いの道に連れて来られるならば、ヘロデの霊魂が滅びないために、御摂理に従い、私はこの世のあらゆる苦労を忍びたいと思います」。天使たちはすぐに天に昇り、聖母に第二のメッセージを伝えます。「ヘロデは悪意に凝り固まっているので、警告も教訓もはねつけるでしょうし、どんな助力者とも協力せず、救いの効果を得ようともせず、諸聖人の取り次ぎもあなたの取り次ぎも努力さえも受け付けないでしょう」。聖母は三度目の伝言を天使に託します。「もし、教会を迫害するのを止めるのはヘロデが死ぬことであるなら、ああ、天使よ、全能者が私に取り次ぎを願うものは誰でも人類の避難所、弁護人、そして仲介者になる権利を与えて下さいました。あらゆる人々が私の御子の御名により、赦しの保証を得るようにとの御配慮からです。もし、私が人々の愛すべき御母であるならば、主の御手による被造物となり、主の御命と御血に値する者とは誰でしょうか?そのうちの一人に対してどのようにして、私は厳しい裁判官になれるのでしょうか?私は審判を任されたことはなく、いつも慈悲を行うように命令されて参りました。愛と厳しい審判に対する従順の対立によって私は混乱しております。ああ、天使よ、私の混乱と心配を主にお伝えし、ヘロデが私の審判なしに死ぬことが思し召しに叶うかどうか質問してください」。天使は三度目に天に昇り、聖三位にお伝えします。そして聖三位の御返事を聖母に伝えます。「あなたの慈悲は、あなたの強力な取り次ぎを願う者に与えられるべきであって、ヘロデのように、あなたの取り次ぎを嫌悪するものにはふさわしくない。あなたは神の御力全部を備えた教会の女王であり、その力を適宜に使うべきです。ヘロデは死ぬべきです。ヘロデの死をあなたが宣告し、命令しなければなりません」。聖母は答えられます。「主は正義にして公平であられます。もしもヘロデが自分の自由意志により慈悲に値しない者とならず、身の破滅を選ばないならば、私は彼の霊魂を救うために何度でも死の苦しみを受けたいと思います。ヘロデは、主の似姿に似せて造られたいと高きお方の作品であり、世の罪を除く子羊の血により救われました。しかし、私はこのこと全てを除外します。ヘロデが神に対する頑固な敵となり、神の永遠の友情に値しないことだけを考え、神の最も公平な正義により、彼がこれ以上教会を苦しめないように、死を宣告します」。神の御母の光栄のため、御母を御子と同じ君主として最高権力を全被造物に対して行使する女主人として任命したことの証拠として、主はこの不思議をなさったのです。この神秘は聖ヨハネの第五章によく書かれています。「はっきり言っておく。子は、父のなさることを見なければ、自分からは何事もできない。父がなさることはなんでも、子もそのとおりにする。父は子を愛して、御自分のなさることをすべて子に示されるからである。また、これらのことよりも大きな業を子にお示しになって、あなたたちが驚くことになる。すなわち、父が死者を復活させて命をお与えになるように、子も、与えたいと思う者に命を与える。また、父はだれをも裁かず、裁きは一切子に任せておられる。すべての人が、父を敬うように、子をも敬うようになるためである。子を敬わない者は、子をお遣わしになった父をも敬わない。」そして直ちに付け加えます。御父は御子に審判権をお与えになりました。御子が人の子であられ、聖母を通して人の子となられました。御子が御母に似ておられるので、審判権に関して、御子と御母の関係は、御子と御父の関係と同じです。御母は御自身により頼むアダムの子孫全員に対して慈悲と寛大の御母です。それと同時に、御母があらゆる人々を審判する全権を保有し、人々が御子なる真の神を讃えるように御母を讃えるべきことを人々が知るように望まれました。主は聖母が主の御母として、単なる被造物として、御母にふさわしい程度と割合において、主と同じ権力を御母にお与えになりました。この権力を行使し、御母は、天使を神の刑の執行者としてカイザリアに行かせ、そこにいるヘロデを殺すことを命じられました。福音史家ルカが述べたように、主の使いはヘロデを打ち、ヘロデの体は虫に食いつくされ、この不幸な男は現世と永遠の死を遂げます。この打撃は内的なものであり、この内的打撃から腐敗と虫がヘロデの体に湧き出て、惨めな死に成り果てたのです。ヘロデのそれまでの行動を説明しましょう。聖ヤコブを斬首し、聖ペトロには逃げられたあと、ヘロデはカイザリアに行きました。自分とシドンとティロの住民たちの食い違いを是正するためです。二、三日してヘロデは王として紫の着物を着て玉座に座り、威張って話しました。人々はお世辞たらたらに彼を勝利者として神として讃えます。虚栄心のかたまりであるヘロデは、人々のへつらいに満足します。神に光栄を帰する代わりに自分を神としたいため、主の天使が彼を打ったのです。これが最後の犯罪でしたが、その他数多くの犯罪を過去に犯してきました。使徒たちを迫害したり、私たちの救世主をあざけったり、洗礼者ヨハネを斬首したり、自分の義妹にあたるヘロデアと姦通したりしました。天使はエフェソに戻り、聖母に刑の執行について報告しました。聖母はヘロデの滅亡を泣き、悲しまれたあと、主の裁定を讃え、教会がこの処罰により得た恩恵のために感謝しました。聖ルカの記すように(使徒十二・二十四)、教会は御言葉により成長し、増大しました。迫害者がいなくなった後のガリラヤやユデアだけでなく、聖ヨハネと聖母によりエフェソの教会も根付きました。そしてアジアの近隣地域や西洋の境界地帯まで広がりました。エフェソで活動しはじめたころ、聖ヨハネは人々に本当の知恵を教え、キリスト教の確実性を説き、奇跡も示しました。彼は、聖い教えの宣教者を聖母に送りました。聖母は人々の心中を察し、心に呼びかけ、天の光で満たしてあげたのです。不幸な人々のために奇跡を行い、悪魔憑きや病人を治し、困窮者を助け、病院にいる病者を見舞い、看護しました。臨終に当たって大勢を助け、最後のあがきにある霊魂を救い、悪魔の攻撃から守り、救世主の所に安全に連れて行きました。非常に多数の霊魂を真理と永遠の生命への道に連れて行き、大変多くの不思議を行いました。