第4書 5章 羊飼いたちの礼拝。ご割礼

ベトレヘムの門の近くで天使たちが人となられた神の誕生を祝った後、何位かの天使たちはこのニュースを、聞く耳を持つ人たちに知らせに出かけました。大天使聖ミカエルは古聖所(リンボ)に行き、聖なる首長たちに知らせました。そこに留まっている聖母の御両親には特別の挨拶をしました。人々は永遠の救いをもたらす神人に対し、新しい賛歌を作曲して歌いました。一位の天使は聖エリザベトと息子の聖ヨハネに知らせに行きました。二人ともひれ伏し、人となられた神に向かい、遠くから拝みました。神の先駆者となる聖ヨハネは、エリアよりももっと燃え上がり、内的更新を遂げたので、天使たちは感嘆しました。ベトレヘム地方にいた羊飼いたちは、キリストの誕生のとき、特別な祝福を受けました。大変な仕事を甘受し、貧しく、へりくだり、世間から嫌われ、救い主を待ち望むイスラエルの民に属していました。良き羊飼いである主と同じく、羊を知り、羊から知られていました。従って、世間一般よりも早く主の誕生のニュースを聞いたのです。この知らせを届けたのは大天使ガブリエルで、人間の姿をして羊飼いたちの前に現れました。この天使の光に突然包まれ、羊飼いたちは恐れました。大天使は彼らに優しく言いました。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである」(ルカ二・十~十二)。大天使が言い終わると、天の大軍がたちまち甘美なハーモニーでいと高きかたに向かって歌いました。「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」。羊飼いたちは、王様が飼い葉桶にいるこの神秘を理解し、すぐベツレヘムに急ぎました。天使の言ったように、赤ちゃんが飼い葉桶のなかにいるのを見ると、「赤ちゃんであるみ言葉」も羊飼いたちを見、御顔から輝く光を発し、羊飼いたちの誠実な心に愛を刻み、恩寵の新しい状態を与え、受肉と人類の救いについての教えを授けました。羊飼いたちは地面にひれ伏し、真の神・人である神、人類の救い主を拝みました。御母はこれを見て旧約の預言と照らし合わせ、思い巡らしました。聖霊の器として幼児の代理者として、御母は羊飼いたちに神を愛し、神に仕えるにあたり、一歩も引かないよう教えました。羊飼いたちは同意し、いろいろな神秘がわかったと答えました。食物を御母から頂き、昼まで留まっていました。羊飼いたちが帰ったあと、御母は御子を聖ヨゼフの腕のなかに渡しました。渡す方も受ける方も跪いたままでした。御母は言いました「私の夫、私の助け手、天地の創造主を受け取り、私の主なる神とともに喜んでください。人類の祝福に参加してください」。御母は心の中で御子に言いました。「私の愛すべきお方、私の友なる夫、聖ヨゼフの腕に抱かれ、話してください。私が頂いた善いものを、準備できている全ての人に分配したいのです」(知恵七・十三)。御母の最も忠実な夫は言いました。「私の妻よ、神の御前には天の柱も震えます。無価値の私がどのようにして神ご自身を抱けるのでしょうか?私は塵で灰です。貴婦人よ、私をましな人間にする恩寵を神に頼んでください」。聖ヨゼフの目からうれし涙がぼろぼろ流れました。御子は聖ヨゼフを見つめ、彼の霊魂を更新しました。聖ヨゼフは新しい賛歌を大声で歌いました。跪いたまま、跪いている御母に御子を返しました。二人が御子に近づくときは跪き、地面に接吻しました。御母に選ばれたことを知ったときから、御母は御子にどんな苦労が待ち受けているかを考えました。御子の将来の苦しみについて、一切を予知したので、神の犠牲の子羊の御母にとり、長年月の殉教生活を送ることになっていたのです。ご誕生のあとで行われる割礼については、永遠なる御父より命令が来なかった間、御子が律法に従うこと、人間として苦しむことを決心してこの世に来た以上、割礼の苦痛を喜んで受けることを知っていました。その反面、苦しみから我が子を免除したいという親心も強く、また、原罪から新生児を浄める割礼は、御子には不必要であることも良く知っていました。このようないろいろな思いで胸が一杯になりながら、御母はへりくだり、待ちうけました。神にも天使にも質問しませんでした。御母も御養父も、割礼中止という神の指示を受けなかったので、律法に表されている神の御意志に添うべきであると考えました。一番完全な先生である救い主が、他の人々と一緒に律法に従いたいと思っているのに決まっています。御母は、普通の割礼が御子になされるべきこと、しかし、御母がその間、御子を抱いていることを聖ヨゼフに伝えました。普通の赤ちゃんたちにもつけられる鎮痛の軟膏が御子にもつけられること、主から切り落とされる包皮(聖遺物)を納めるガラスの入れ物を用意することを聖ヨゼフに頼みました。出血のとき、御子の御血を受ける布を御母は用意しました。私たちの救いのための御血の一滴も地面に落とさないようにするためです。用意万端整った後、聖ヨゼフに祭司を呼んでくるように頼みました。割礼の時、何という名前を御子につけるか、聖ヨゼフに尋ねました。聖なる夫は言いました。「私の貴婦人よ、いと高きかたの天使がご割礼について知らせたとき、御名はイエスとすべしと言いました」。御母も言いました。「御子が私の胎内に宿ったとき、同じ名前が神から私に告げられました。イエスという名前を祭司に提案しましょう」。このとき、無数の天使たちが人間の姿になって天から降りてきました。輝く白い着物を着、美しい赤の刺繍が施されています。手に棕櫚の葉を持ち、頭に冠を被り、多数の太陽よりもまぶしく輝きました。しかし、一番輝いているのは胸につけた盾で、イエスの御名が刻まれています。この盾からの光は、全天使から出る光よりももっと輝きます。天使たちは洞穴のなかで二列に並びます。天使たちの首長は二位の天使、聖ミカエルと聖ガブリエルで、他の天使たちよりも一段と光り、イエスと書いた板のようなものを手に持ち、この字が他の天使たちの字よりも一段と大きく、際立って見えます。二位の天使は全員の前に進み出て言いました。「貴婦人よ、これが御子の名前です(マタイ一・二十一)。永遠の昔から神の御心のなかに書かれています。全人類の救いの印になります。御子は、同時にダビデの玉座に座り、治め、敵を打ち負かし、ご自分の足代とし、審判する一方、友だちをご自分の右手に座らせます。全ては御自身の苦難と流血により可能になります。今、御血を流されるのは、救い主として永遠の御父に従うためです。私たちは主にいつも仕え、天国に凱旋の帰還をされるとき、お供いたします」。御母と御養父は喜び、主を崇め、賛歌を歌います。やがて祭司が生誕の洞穴にやってきました。二人の役人も助手としてついて来ました。洞穴のあまりにも見すぼらしさに驚きましたが、御母の高貴な威厳に感嘆し、何もわからないまま御母と御子の眼差しに感動しました。祭司は御子に割礼をしました。御父に対し、御子は罪人の立場をとり、この割礼を受けたこと、第二に、割礼の苦痛を喜んで受けたこと、第三に、人類のために御血を流したこと、この三つを捧げ、人間になったからこそ、この苦痛に会えたことを感謝しました。御父の御喜びとなりました。御母はこの神秘がよくわかりました。御子の苦痛はひどいものでした。割礼のナイフは火打ち石に使う石で、人間の頑固さよりももっと鈍かったのです。御母は泣きながら御子を抱きしめ、聖遺物と御血を受け取りました。祭司は御両親に向かい、御子の名前は何にするか尋ねました。御母は聖ヨゼフに礼を尽くし、名前を発表するように頼みました。聖ヨゼフは恭しく御母に向かい、御母が御子の甘美なる名前を最初に口にすべしと説明しました。神の御導きにより、ご両親は同時に、「この子の名前は『イエス』です」と言いました。祭司は答えました「両親が同意しています。お子様の名前は偉大です」。祭司は他の子供たちの名前の登録簿に御子の名前を記しながら、心の奥底から感動し、涙があふれ出ました。訳がのみ込めないながら祭司は言いました。「お子様は主の偉大なる預言者であると私は確信しています。よく注意して育てなさい。私にできることがあれば申し出てください」。聖マリアと聖ヨゼフは祭司に感謝し、ロウソクを何本かと他の品物を贈り、祭司は帰っていきました。聖マリアと聖ヨゼフは割礼の神秘を祝い、イエスの御名を誉め、甘美なる歌を歌い、喜びの涙を流しました。御母は御子の割礼の傷に薬をつけ、痛みのある間、昼も夜も御子を抱き続けました。