1巻 6 きりのない欲望

人は、限りなく何かを望むと、すぐに心が乱される。高慢な人や、けちな人は、やすらぎを知らない。心の貧しい謙遜な人は、それに反して、平和のうちに生きている。だが自分の欲望の声を、まだ消しきれない人は、しばしば誘惑を受け、小さなことに負けてしまう。心が弱く、肉の重さに引きずられ、感覚的なことに傾きやすい人は、世俗的な執着をぬけきるのが、むずかしいものである。だから、それをぬき出ようとすると、ゆううつになり、何か反対を受けると、すぐに怒る。しかも、望んだものを手に入れると、良心の呵責にせめたてられる。その欲は、望んでいた平和を与えてくれないからである。つまり心の平和は、欲望に従うことでなく、それに抵抗することにある。肉の声に聞く人、外のことだけしか従って生きている人には、平和がなく、霊的なことに従う熱心な人にだけ、平和がある。